本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
AirDropサポートの意味するところ
ユーザインターフェースの変更に注目が集まりがちな「iOS 7」だが、それ以外にも目を見張る新機能は多い。これまでVoIPや音楽再生など機能によって限定されていたマルチタスキングは、すべてのアプリで使用可能になった。機能設定項目を集約した「コントロールセンター」が新設され、「通知センター」はタブ対応となり情報を分類しやすくなった。日本語対応も同時にアップデートされるかどうか不明だが、「Siri」には男性の声が追加され、Wikipediaの検索も可能になるという。
個人的に注目しているのは「AirDrop」だ。AirDropといえば、OS X Lionからサポートされた無線LANのアドホックモードを利用するファイル転送機能だが、iOS 7では単なる移植ではなくベース部分の機能に拡張が加えられている。
まず、文書や写真以外のデータも転送対象に含まれる点が興味深い。基調講演では踏み込んだ説明は聞けなかったが、AppleのウェブサイトにあるAirDropの説明文には「共有ボタンがついたアプリケーションにあるものを何でも」と書かれている。これはつまり、URLや電話番号、メールアドレスなど独立したファイルではないデータを扱えるということで、Finderで扱えるもの(=ファイル)しか操作対象にできないOS X版AirDropとは仕様が異なることを意味しているからだ。
通信経路を無線LANとBluetoothのデュアル構成にしていることにも注目だ。iPhone 5を例にすると、対応する無線LAN規格のうち最速のIEEE 802.11nは、最大24MB/秒の通信が可能な「Bluetooth 3.0+HS」を実効速度において上回るため、通信速度だけで考えればBluetoothを積極的にサポートするメリットはない。
しかし、AirDropの“本命”はBluetoothかもしれない。Bluetooth 4.0に採用された「Bluetooth LE(Low Energy)」は、低消費電力かつ近接通信に適した仕様であり、通信速度は最大1Mbpsと遅いが“細切れデータ”の扱いに適したプロファイルも備えている。AirDropを利用できるデバイスがiPhone 5とiPad(第4世代)、iPad mini、iPod touch(第5世代)に限定されていることからしても、Bluetooth LEと切り離しては考えにくい。後述するAppleの動向を踏まえると、その目指す方向が見えてくるはずだ。
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