楽天は出版業界関係者を招き、同社のオンライン書店「楽天ブックス」、電子書籍ストア「kobo イーブックストア」の事業戦略について説明会を開催した。
実用書・小説が強い
楽天のオンライン書店、電子書籍
まず登壇した楽天執行役員パッケージメディア事業長兼イーブックジャパン事業長の舟木 徹氏は、「楽天ブックス」のサービス強化について、まずは物流に力を入れると説明した。
翌日配送サービスである「あす楽」のエリアは現在関東圏が中心だが、すでにメディアでも報道されているように、関西圏の物流拠点を開設予定であるほか、九州地区についても投資していくとする。
また、楽天ブックスとkoboの連携の弱さについてはみずから認め、販売ページ内で紙か電子かを選んで購入できるようにするなど、Amazonへのキャッチアップを約束した。
その後に「楽天ブックス」「kobo」の出版社別、タイトル別の2012年度ランキングが紹介された。出版社別ランキングについては、紙・電子とも、講談社、集英社、角川GP(角川書店)の順。タイトル別では、紙では実用書がずらりと並ぶ。これは楽天のコアユーザーが「30代女性が多いため」と分析する。
電子については、扱っているタイトル数のジャンル別割合ではコミックが最多にも関わらず、実際に販売された割合では小説が上回るという。前述の実用書と合わせて、楽天のユーザー傾向が見えてきた形となった。
Amazon/Kindle一強でない状態を楽天は作れる?
出版社トップも楽天に期待
後半に登壇した同社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、アメリカで電子書籍に急速に移行しているトレンドを踏まえその可能性をあらためて紹介。国内電子書籍市場でシェア50%(2020年)と、500億円の売上(2016年)という目標を掲げた。
端末については、具体的なロードマップは示されなかったが、専用端末のカラー化と、汎用タブレット上のアプリという業界全体の流れとともに、iOS版アプリの4月中旬のリリースを公表。また、先日koboの本社があるトロントに行って、開発中の端末を見てきたとのことで、「こんなにカッコイイモノが出るんだ」という感想とともに、今後への含みを持たせた。
なお、出版業界関係者に向けては「コンテンツの市場規模を10倍に」という最終目標を掲げ、今後はタイトル数よりも、人気作品の電子化を重視したいとする。具体的には「ベストセラータイトルの80%の電子化」「新刊書の同時発売」「既存書籍の50%の電子化」の実現を目標とし、そのために、約2万冊のコンテンツを楽天のコスト負担で電子化する計画もあるという。
講演の最後には、電子書籍でグローバルに競争できるプラットフォームは、世界シェア55%のAmazonと、同じく20%の楽天(kobo)しかないと強調(アメリカを除けば、互角のシェアとも)。そのうえで、あらためて業界関係者に協力を要請した。続いて、出版社代表として登壇した講談社代表取締役社長の野間省伸氏も「正直Amazonの力が強いが、楽天に頑張っていただきたい」と期待を寄せた。