最新スマホが次々登場 Mobile World Congress 2012レポート 第18回
Nokiaに聞くWPとエコシステム戦略、そして4100万画素カメラ
2012年03月05日 12時00分更新
NokiaがMicrosoftと戦略的提携を発表して1年。今年の「Mobile World Congress 2012」で同社は、Windows Phone 7.5搭載スマートフォン「Lumia」の最新機種や、4100万画素カメラ搭載のSymbian OS採用機種「Nokia 808 Pure View」などを発表し、存在感をアピールした。
今回のMWCにおいて、Nokiaで開発・マーケットプレイスを担当する上級副社長のMarco Argenti氏と、Symbian製品マーケティングトップのVesa Jutila氏の両名に、Windows Phone戦略を中心に話を聞いた。
Windows Phoneエコシステムの成功が重要
――MWCでLumiaの最新機種を発表しましたが、今後のWindows Phoneの計画は?
Argenti氏:現時点で言えることはないが、Windows Phoneは、地理、価格、開発者エコシステムと、さまざまな点から着実に戦略を進めてきた。今後もそれぞれを拡大していく。
機種という点では、Lumiaは2011年10月の「Nokia World」に2機種がデビューし、わずか5ヵ月で4機種になった。地理的には、スタート時は9ヵ国だったが、現在米国を含む33ヵ国で販売されている。価格面では、今回発表した200ユーロを切る「Lumia 610」により、大きく拡大することになる。
これらに加え、エコシステムも強化しており、多言語、多通貨に対応し、ローカル(地域)開発者を積極的に支援していく。
――MWCでは、ZTEも同社2機種目となるWindows Phone機種を発表し、Androidに加えてWindows Phoneへのコミットを明言しました。ZTEは低価格帯に強いメーカーですが、Nokiaはどのように競争する戦略ですか?
Argenti氏:Windows Phone戦略を発表したときから、Windows Phoneエコシステムの成功が重要だと強調してきた。Windows Phoneは優れたプラットフォームで、他社が利用するのは当然。他社のWindows Phone採用は大歓迎だ。われわれの目標はこの中でリーダーになることだ。
Nokiaにはこれまで培った知識、技術力があり、具体的には製品のデザイン、機能、ユーザー体験に現われている。低価格機種を投入することでNokiaのユーザー体験を広げていくが、妥協はしない。Nokiaブランドは世界に浸透しており、さまざまなWindows Phoneの中からNokiaを選んでもらう自信がある。今後もNokiaのブランドバリューを守る。
Jutila氏:Lumia 610は800MHz動作のCPU、256MB RAMなどハードウェアは比較的低スペックだが、ほかのLumiaと同じぐらい高速でスムーズだ。ユーザー体験はわれわれの哲学で、これは低価格帯のLumiaでも同じ。開発にあたって妥協はしなかった。
Microsoftは4月にWindows Phoneのアップデートを計画しており、対応する言語が増える。これにより中国など新しい市場でもLumiaを提供できるようになる。
――現在、スマートフォンというとユーザーはAndroidやiPhoneのユーザーインターフェイス(UI)を連想します。Windows PhoneのUIは非常に異なるものですが、どうやって訴求していくのですか。
Jutila氏:NokiaはWindows Phone OSとUIに満足しているし、ユーザーとオペレーターからの反応もよい。同じような端末が並ぶ中、LumiaのUIは新鮮だとの声をもらっている。NokiaはWindows Phoneの上に差別化を図れるNokiaのサービスとエクスペリエンスを載せており、Lumiaは市場にあるスマートフォンとはまったく異なるユニークな端末だ。ほかの2つと違うことがリスクにならないよう、マーケティングに大きな投資をし、市場にメッセージを送っている。すぐには受け入れられないかもしれないが、可能性はとても大きいと思っている。
そういった意味で、新しい層にリーチできるLumia 610は戦略的に重要な一台となる。優れたWindows体験を魅力的な価格で提供する。
――エコシステムでは今後、ローカル開発者の支援を強化していくとのことですが、開発者向けの取り組みについて教えてください。
Argenti氏:ウェブのトレンドは、ソーシャル(Social)、ローカル(Local)、モバイル(Mobile)の「SoLoMo」だ。ローカル向けアプリには、そのアプリを使うローカルなコンシューマーがおり、持続性のあるアプリエコシステムを確立できる。
取り組み例としてアプリストアのキュレーションがある。Nokiaの強みの1つが世界各地で確立しているブランドとプレゼンスで、たとえばスペインでNokiaのアプリストアにアクセスすると、スペイン語のアプリケーションが並んでいる。これはNokiaスペインのマーケティングチームがキュレーションしたものだ。
開発者から見ると、Windows Phone、Symbian、S40とすべてのNokiaの携帯電話で共通した単一のビジネスプラットフォームを提供しており、作業を簡素化する。OSは違うが、アプリのディストリビューションポイントは1つとなり、地元のNokiaチームが支援する。
これらに加えて、開発者のビジネスを支援するビジネス開発ツールも提供する。開発者がアプリを収益に変えるのに必要な数値などの情報、課金やAPIなどのツールを含むものだ。ただ単にアプリを全体に向けて公開して、誰かが発見してくれるのを待つというのは非現実的。効率のよいアピールが必要だ。ビジネス開発ツールを使えば、ターゲットにしているコンシューマにリーチできる。
これまでのところ、Nokiaのアプリストアで100万以上のダウンロードがあったアプリ開発者(社)は350以上だ。Nokiaは上位アプリ開発者がズバ抜けて高いロングテールではなく、多数のローカルアプリ開発者が参加し、テール部分がぶ厚いロングテールを目指している。
最終目標は、世界中の開発者がビジネス展開できること。アプリがもたらす経済は大きく、世界各地域の経済活性化に貢献したい。
――「NAVTEQ」による位置情報ベースのプラットフォームもプッシュしていますね。
Argenti氏:NAVTEQは膨大な地域をカバーする地理データで、Nokiaにとって強い資産となっている。この上にドライブナビゲーション体験、歩行者モードなどの情報レイヤーを重ねており、今回、新たに地下鉄などの公共交通機関のナビゲーションも追加した。さらに、万単位のPOI(Point of Interest)レイヤーを重ねており、この数も毎日増えている。最後のレイヤーがソーシャルで、友達がどこにいて何をしているのかがわかる。
このレベルのスタックを提供できるのはNokiaだけで、公開したAPIを利用して開発者はアプリを開発できる。
このような垂直統合戦略と同時に、水平化戦略も進める。つまり、Androidを含むほかのプラットフォームへの提供で、Microsoftとの提携も生かされる。HTML5対応も強化する。
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