わずか電池40本で鈴鹿を攻略可能なのか!?
事前のイメージでは、普通の電気自動車に単三電池40本を装着したようなマシンを想像していたのだが、実際のマシンを見てびっくりしてしまった。
まず、小さい。全長が人の背丈より少しだけ長いくらいで、横幅も大人の肩幅ほどしかない。ドライバーは仰向けに肩をすぼめて乗車し、首だけを少し持ち上げて前方を見るという窮屈な姿勢を取る。その上からカウルをかぶせると、視界もかなり限られたものになりそうだ。
そして、全体の形状がまるで弾丸である。地面を這うように走る姿は、なんとなくイモムシか甲虫をイメージさせる。少しの燃料で航続距離を競う、いわゆるエコランで使われている車両と外見はほぼ同じなんだろうが、この種のマシンを初めて見る筆者には「かっこいい」というより、むしろ異様な感じさえした。
KV-40の競技は午前と午後の2回に分けられ、それぞれのヒートで各マシンは1台ずつスタートし、1周のタイムアタックに挑戦する。この時点での筆者の予想は、まだ半信半疑だった。タイムアタックと銘打ってはいるが、単三電池40本の動力では、たとえ鈴鹿の国際コース5.807kmを走りきれたとしても、とてもゆっくりしたスピードでの記録となるに違いない。第1ヒート先頭スタートのマシンが、スタートして早々のメインストレートを停止しそうなスピードでトコトコ走っていったのを見て、その思いはさらに強くなっていった……だが!
第2走者のマシンがスタートを切った瞬間、メディアセンターの中がどよめいた。
は、速い!! まだメインストレート上を進んでいた第1走者のマシンを一瞬で抜き去ると、そのマシンは矢のようなスピードで第1コーナーへと突っ込んでいく。あわててサーキットカメラの映像を追ってみると、S字からダンロップにかけての急勾配をわずか二呼吸ほどの時間で駆け抜けたそのマシンは、デグナーを見事なライン取りでクリア。車体があまりに小さいために、カメラが切り替わってもすぐには見つけられない。最初は画面上の埃かと思ってしまったくらいだ。
バックストレートのスピードは、あきらかに昨日まで見ていたソーラーカーよりも速い。後から聞いてみると、今回の最高速度は110km/hを少し超えるくらいだったそうだが、車体が小さいだけにものすごいスピード感だ。本当にこれが単三電池40本のパワーだけで、人間を乗せて走っているのか!?