突然浮上したアクティブスピーカーという選択
KS-1HQMの発売は昨年で、時期はそれなりに経過しているが、ウェブ直販限定でありながら、ネットなどの口コミでもおおむね高い評価を得ている製品と言える。本体には25W+25Wのデジタルアンプと24bit/96kHz入力対応のUSB DACを内蔵しており、直販価格は4万9800円だ。
現在使っているIcon(3万5700円)が専用スピーカーS-1(3万5700円)とのセットで標準価格7万1400円。実売価格はもう少し低く、ヘッドホン出力を装備しているなど若干の付加要素もあるので、近いクラスの製品と言えそうな気がする。
後継のIcon2は4万5100円と初代機より約1万円価格がアップ。その代わりに、USB DACがハイレゾ対応。アンプ出力も倍(24W+24W)になっている。既存ユーザーならアップグレードサービス(+1万9740円)を利用してIcon2に基板交換するという選択もあるため、筆者はさらに悩ましい。
ただしS-1との接続は考慮されていない点が気になっていた。初代IconにあったS-1専用イコライザー(S-1の周波数特性に合わせた調整回路)を搭載していないためだ。S-1はすでにディスコンなのでしょうがないが、多少残念な部分ではある。
いずれにしても、KS-1HQMは価格的にも性能的にもIcon+S-1からの移行にピッタリという気持ちがあった。過去の試聴でポテンシャルも実感していたので、じっくり比較試聴してみたいと思ったのである。
奇しくもともにフルレンジ、空間表現に優れる
類似点が多いKS-1HQMとIcon+S-1だが、ともにフルレンジスピーカーであることも共通だ。フルレンジというのは、低域から高域まですべての周波数を1つのユニットで担当させるスピーカーの方式だ。
一方低域用・高域用など、音域によって使用するユニットを分けているのがマルチウェイという方式。高級スピーカーではこちらのほうが一般的だが、再現できる音域が広くなる反面、クロスオーバー(低域と高域が切り替わる部分)のつながり感や、位相(音が出るタイミング)の細かな調整が必要となる。
フルレンジスピーカーは、周波数帯域の面では不利だが、複数のユニットに信号を振り分けたり、位相・音軸の調整といった複雑なことを考えず、シンプルな設計にできる。オーディオにおいてはシンプルであることは音の良さにつながることが多いので、コストの制約がある今回のようなシステムでは有効なケースが多い。
また、マルチウェイスピーカーでは、音が複数のユニットから出て広がっていくが、音のフォーカスをピンポイントで合わせたいといった場合には、1点を中心に音が広がるフルレンジスピーカーのほうが有利だろう。その効果が最もよく分かるのが定位感だと言われている。つまり、ボーカルが中央にピッタリと収まったり、オーケストラの楽器の配置がしっかりと分かるような空間の表現の良さにつながるのである。
筆者がIconを気に入っていた理由も、まさにこの定位感の良さ(と後で述べるような音の広がり感)だったのだ。