政府機関の微博対策は「火消し」だけではない
さて微博の利用者の急増加と本家Twitter同様の「今までにない情報の爆発的拡散」から、今年に入ってから多くの共産党の機関が微博対策として学習会や内部通知を出している。
ミクロからマクロまで、微博を政治に使おうとすることを「微博問政」と言う。「共産党の機関」と言うとなんだか物々しいイメージがあるかもしれないが、いわゆる役所や大学から、都会の団地の代表や、PCやネットの普及が遅れている村や集落の代表までも含まれる。
微博の中国ならではの使用法として、(レアな用法ではあるが)政治腐敗の現場を微博上につぶやくというのがある。もちろん、微博登場以前から現体制への不満の声が多数あり、微博においてもやはりそういった内容はつぶやかれているが、こうした情報は従来通りしっかり書き込み後に消されている。
先に書いた政府機関が行なう微博対策というのは火消しではない。その内容は共産党員自らが率先して、党と政治のアピールや微博利用者と交流をするというもの。また腐敗の通告を奨励し、しっかり対応しようというものである。その方針はオープンな情報であるため、「百度」などの検索サイトで検索すれば、ニュースや資料などが多数確認できる。
例を挙げて紹介すると、とある学校の共産党員向け公告には「1.発展進捗表に基づいて、党員としての責任を持ってつぶやくこと」「2.『歴史上の今日』と『深い見識』の2点について必ず毎日つぶやくこと」「3.学生には今日何を学んだか微博でつぶやかせること」「4.党員名のリストをつぶやくこと」が記されており、共産党員のつぶやきにはいろいろ制限があることが伺える。
また、別の例を挙げると「新浪微博・網易微博(ミニブログ)・QQ空間(ブログ)・開心網・人人網(SNS)に広くアピールせよ」と書いてある。著名なコミュニケーションサイトが増えれば、それに併せて新規登録し、アピールしなければいけない。このため、共産党員のネットでの仕事も増えるばかりであり、どうにも大変そうである。
さらに各省各市各区まで、役所の窓口となる微博が存在。上海の名門校である復旦大学が今年4月に発表したレポート「中国政務微博研究報告」によれば、その数は中国全土で2400強あるという。
同レポート以外にも政府の微博レポートはいくつかあるが、そのキモは「如何にネット上の市民の支持を得て信頼を得るか」というもの。
政府機関によるPR目的で微博を利用する人は多く、それにより市民の行政の不満を和らげる効果があるとする記事もまた多い。
中国のTwitterもどきである微博は、政府にとっても必要不可欠なものとなっているようだ。
そうした中、どこまでを“官”と呼んでいいかわからないほど、共産党員の利用者が多いこと、おそらくはPRがため彼らは複数の微博サイトに登録していること、それに前述の通りフォロワーを販売するビジネスも存在することから、純粋な利用目的での民間人の微博利用者数は、統計に出る数字より若干少なめに見積もった方がいいだろう。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
この連載の記事
-
最終回
トピックス
中国ITの“特殊性”を100回の記事から振り返る -
第99回
トピックス
受注が急増する中国スパコン事情 -
第97回
トピックス
検閲厳しく品質がイマイチな中国地図サイト事情 -
第96回
トピックス
iPhoneが大好きな中国人、その実態とは -
第95回
トピックス
中国から学ぶネットリテラシーの上げ方 -
第94回
トピックス
香港電脳街へのいざない -
第93回
トピックス
中国とVPNの切るに切れない関係 -
第92回
トピックス
中国でデスクトップPCを修理する(後編) -
第91回
トピックス
中国でデスクトップPCを修理する(前編) -
第90回
トピックス
中国ネットユーザーが創り出す新しい日本旅行のスタイル - この連載の一覧へ