初期衝動は「もっと評価されるべき」
―― 藤城さんがアートに興味を持ったのはいつ頃ですか?
藤城 子供の頃から絵を描くのが好きだったんですが、本格的に意識したのは高2からです。自分にはモノを作ることを仕事にするしかないと考え、美大予備校に通うようになって、そこで会田 誠さんのDVDを見せてもらったり、大竹伸朗さんの展示会に連れて行ってもらったりと、すごく刺激的な体験をさせてもらいながら、自分の進む道を具体的にしていった感じですね。もともと、古典芸術ではなく、現代に生きている人がリアルタイムに自分の考えているものを作品にしていくというものに興味がありましたし。
同時期に深夜テレビでたまたま「涼宮ハルヒの憂鬱」を観たのも大きかったです。萌えやストーリーというより、京都アニメーションの演出に感動して。
―― それらが融合して、現在の「オタク的アート」スタイルが作られたわけですね。
藤城 感情的にもつながっていますね。現代アートも定義が抽象的だということで、「アートって呼べば何してもいいと思ってるんじゃないの?」という拒絶反応が起きやすいと思うんです。ハルヒも「萌えアニメ」ということで、世間では軽く見られがちです。そういう風に、自分が好きなものが、「どうせアレでしょ?」と正当に評価されず、端から拒絶されてしまう傾向にフラストレーションを感じていたんです。
その反動とともに、僕が思うような萌え絵をモチーフにしたアート作品を作る人はまだいないよなという考えもあって、現在のスタイルで活動しようと決めました。高3の秋頃……2007年ですかね。ちょうど流行りだしていたPixivに作品を投稿したり、「POST POP」(自分のサイト)をスタートさせたり。
―― 発表の場にネットを選んだのは?
藤城 高校時代はリアルな場で発表の機会がほとんどなかったのが大きいですね。ネット自体、小学生の頃から慣れていましたし、黒歴史ですけど二次創作系のサイトを作ったこともありましたから(笑)。
現在も友人やつるむ人は、大学よりネットのほうが断然多いです。大学でも絵画の技術を教えたり学んだりする人はたくさんいますけど、志気が強い人は少なくて、フラストレーションを覚えるんですよ……。ネットだと、TwitterやPixivでも作品をしっかり見てくれる人や論じ合える人が多いので、必然的に比重が大きくなっています。単純にネットでは常に繋がっているから、ということもあるかもしれません。
ただ、大学に入ってからは発表の場として現実空間を選ぶ意識は強くなりました。ネットのつながりを元に、リアルでアウトプットするという感じです。チームを組んだりして。
―― 手法として現代アートを選んだのは、「リアルタイムに自分の考えているものを作品にしていく」のに最適だったわけですね。
藤城 そうですね。いまのネットの空気感を形にするなら、古典美術ではないなと。世界的にみても、日本のネット文化はすごく特殊だと思うんですよ。現代アートのような創作のサイクルを、意識せずともニコニコ動画のシステムやMAD動画なんかが担っています。そういう表現を生み出す力、下地みたいなものは世界に誇れると思います。そのすごさを体現するなら、やっぱり現代アートの手法が都合がいいんじゃないかなと思うんですよ。
(次ページに続く)
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