成功の鍵は「ガイナックスの利益」を考えることだった
車のCMではなく、本気のアニメを――スバルの挑戦【後編】
2011年06月04日 12時00分更新
お客さまと同じように相手側企業に尽くす
―― ということは、この「プレアデス」は、アニメファンの人やパソコンユーザーに対して、スバル側から「信頼」を提供する試みだったということでしょうか?
鈴木 そうですね。アニメも、好きな方に作品を楽しんでいただければと思って作っていましたから。その意味でもガイナックスさんと組んだのは正解だったと思います。お客さまに、しっかりとメッセージ性を持って伝えていくようなものづくりをされていらっしゃるので。良いコラボになったんじゃないかなと。
(C)FUJI HEAVY INDUSTRIES / GAINAX / S×G アニメプロジェクト実行委員会
―― タイアップが成功する鍵は何だと思いますか。
鈴木 相手側の企業にどれだけ尽くせるかが大事ですね。お客さまに尽くすのと同様に。うちの場合なら、コラボしたときにガイナックスさんにどんなメリットが出るのかとかいう部分を一緒に考えることだろうなと思います。
今回は、クオリティの高いものを作っていただいたことで、それがお客さまの評価に繋がったというのは彼らにとってもマイナスなことではないと思っています。逆に、われわれが押し付けの広告を作ることによって「アニメの質を下げる=ガイナックスの評価が下がる」ということは絶対にしてはいけないなと思っていました。
―― なるほど。企業同士の協力というのは、発注側と受注側などのスタンスを越えて、お互いとってベストなものを作り出せる体制にするということですか。
鈴木 そうですね。お互いに、相手の身になってということが大事だと思います。往々にしてマーケティングにおける日本のタイアップ事例では、双方、自分の企業をどれだけうまく露出していくかだけを考えがちなんですけれども、お互いのことを考えながらやった方が結局はうまくいくんですね。これも、長い目で見たリターンを考えるということだと思うんですけれども。
(C)FUJI HEAVY INDUSTRIES / GAINAX / S×G アニメプロジェクト実行委員会
日本の精緻なものづくりがもっと広がれば
鈴木 今回、広告アニメを作ったことで、日本のアニメの素晴らしさを感じました。僕はアニメは全然詳しくなかったんですけれども、見てみるととても面白い。こんなしっかり作っているのに、今までどうして知らなかったんだろうと思ったりもしました。
アニメの認知度も、もっと上がればいいなと思います。海外でも評価が高いですよね、日本のアニメは。
―― そうですね。けれど、ファンではない人からみたアニメというのは、国内においても認知度にまだ伸びしろがあるかもしれません。
鈴木 日本のものづくりというのは、そういうところがありますよね。車もそうですが、鉄器や和紙、和菓子など、とても精緻な仕事をしていても、まだあまり知られていないものもあります。
もっとプロモーショナルにやればいいのにと思ったりしますが、でも、そうじゃないから職人なのかもしれない。いいものなんだから広げようというのは、僕ら広告サイドがやる仕事でもあるのかな。
大きく言えば、日本のものづくりとプロモーションは、一緒になって進むことで、新しいところへ行ける気がしますね。
(C)FUJI HEAVY INDUSTRIES / GAINAX / S×G アニメプロジェクト実行委員会
(次回はいよいよ制作側のガイナックス編!)
■著者経歴――渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ)
1967年、愛知県生まれ。椙山女学園大学を卒業後、映画会社勤務を経てフリーライターに。アニメをフィールドにするカルチャー系ライターで、作品と受け手の関係に焦点を当てた記事を書く。日経ビジネスオンラインにて「アニメから見る時代の欲望」連載。著書に「ワタシの夫は理系クン」(NTT出版)ほか。
「放課後のプレアデス」公開記念キャンペーン
シネマコンプレックス、ユナイテッド・シネマでは、「放課後のプレアデス」公開を記念したキャンペーンを実施。6月4日から7月1日までプレアデスのマナームービーを上映するほか、オリジナルグッズも販売する。豊洲劇場ではアニメをイメージしたカフェスペースも6月4日から19日までの期間限定でオープン。詳しくは公式サイトで。
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