普段はDTMで曲を作っているボカロPが、バンドを組んでステージに上がる。そんな画期的なイベント「ドキッ☆ ボカロ曲だらけの生ライブ 〜Pもあるよ〜」(略してドキ生)が、7月16日・17日の第8回開催をもって最終回を迎える。
2009年5月から現在までに計7回。「ドキ生アコースティック」と銘打った小規模編成のライブも計3回行なわれてきた。その間、このイベントがボカロシーンにもたらしたものは大きい。ボカロPには人前に立って演奏する面白さを提供し、またボカロファンにはさまざまなアレンジで演奏する生バンドの楽しみ方、ライブという場の面白さを教えた。
今では同様のイベントも増えてきたが、ドキ生はアマチュアのイベントながら回を重ねるごとにグレードアップし、Pやファンの支持も厚かった。そんなイベントが、このタイミングでなぜ終わってしまうのか。ドキ生の主催者である、アカサコフ(にいとP)に話を聞いた。
第8回ドキッ☆ ボカロ曲だらけの生ライブ ~Pもあるよ~(最終回)
日時 2011年7月16日(土)・7月17日(日) 15:30開場 16:30開演予定
場所 新宿BLAZE オールスタンディング(定員800人)
料金 1日チケット(3000円)、2日間共通(5500円)、入場時ドリンク代別
チケット 5月28日からイープラスで予約開始。5月29日の「ボーカロイドフェスタ」でも販売予定
1日目
1mm♪ [ichiP、手タレP、ぱやP、Bumpyうるし、Milia]/アトランタ☆デッドボールズ [デッドボールP (他メンバー未定)]/とくPバンド(仮) [とくP、MARiA、セキタヒロシ(HiBaNA)、早川誠一郎、れるりり]/BabyDollSymphony [こくまろみるく(ティッシュ姫)、りの、YUTO、イモ男爵]/ENDless☆JK [オワタP、SAMfree、鋼兵、謎の人物K、ハバネロ炒飯、副団長、アクア]/et nu [ナノウ、ルシュカ、町屋、地味侍、安定型アンパンマン]
2日目
あらいやかしこ [梨本うい、taroO、KMT]/古川本舗歌舞伎町営業所 [古川本舗、キャプテンミライ、すこっぷ、kous、wowaka、acane_madder、ちびた、三重の人(VJ)]/AGOBOT [アゴアニキ、ヒトミ、だい]/NO LEAF CLOVER [絵師じゃないKEI、krow-work、イナバ、万里]/-PF AUDIO- [prkr、ふゆ、+guest musicians(きよの、ゆ(仮)、じろー、りなこ)]
<ゲスト> 時空勇者タマデラス、藤山晃太郎、ムラサキ☆チクビ
やめてみてどうなるかも見てみたい
―― さて、ドキ生が次で最終回を迎えるということなんですが。
にいとP 最終回は新宿BLAZEというできたばかりのハコでなんですけど、キャパが800人の会場で、2DAYSやります。
―― 一番規模が大きいんじゃないですか。合わせて1600人ということですね。
にいとP 最後は派手にいこうと思いまして。過去のドキ生に2度3度と出演いただいた人たちを中心に、その集大成を見せていただきたいと思っています。
―― そこまでのイベントに育ったのに、なぜやめるんですか?
にいとP 去年の春くらいには、もう決めていたんです。1回目は単発のつもりで企画したんですけど、ものすごく反響が大きくて。オレも出たいという人が次々現われたんです。それで2回目以降もやることになったんですが、同時に何か目標を持ってやっていこうということで、それを最終回に実現しようと。
―― 最終回に設定した目標というのは?
にいとP まず3回目が終わったあたりで、ライブのクオリティはどうなんだと。普段から活動しているバンドは安定した演奏だったんですが、数年ぶりのライブだったり、初めてのライブだったりのボカロP達が即席のバンドを組む為、大学の学園祭レベルという評価があったのが凄い悔しくて。そのレベルアップをはかりたい。バンドって2回3回とやるうちに、はぐれメタル(ドラクエシリーズのモンスター)を倒し続けたくらいレベルアップするんですよ。だから過去の出演者を出しつつイベントを回していこうということになったんです。
―― 場数を踏んで、安定したバンドでイベント全体のレベルを上げようということですね。
にいとP ところが今度はレベルが上がりすぎちゃって、逆に新しい人が入りにくくなったんです。それで最終回の前に「ドキ生Debut」というイベントも組みました。ドキ生初出演のバンドを集めて、大塚Deepaという少し小さな会場でやります。
ドキ生Debut
日程 2011年05月14日土曜日
時間 開場15:30 / 開演16:30
場所 大塚Deepa
料金 2500円(ドリンク500円別)オールスタンディング(定員250人)
出演 えも☆ぽよ/3レン腐/カナリア/送りバンド/monoral in the stereo
―― うーん、繰り返しになるけど、そこまでやっておいてもったいない話ですね。
にいとP うちと同じコンセプトのライブをやるという話もあちこちで聞いています。今年はVOCAROCK festival※が川崎のクラブチッタでありましたけど、自分たちのイベントと時期が被っていたんですね。自分たちも毎回100万円クラスの予算をかけてやっているんで、そこに商業のイベントをぶつけられると怖いです。アマチュアなので赤字にはできないし。
※ ボカロコンピ「VOCAROCK collection feat. 初音ミク」(Amazon)を販売するFARM RECORDSの主催イベント
―― 商業イベントはたくさん出てくると思いますよ。でも、そもそもボカロはユーザー発の文化じゃないですか。だからライブイベントもユーザーがやるところに意味があるんじゃないですか?
にいとP 止めてみて、どうなるかも見てみたいんです。他のイベントと比べてどうなのか。ドキ生でライブに初めて来たという人も多かったんですけど、その土壌は自分たちで作ったんだし、それを商業の人たちが持っていくなら、僕らはその種をまいたということでいいんじゃないか。それで一度納得して終わってみようと。それに、ドキ生を始めてから最終回までで、2年2ヵ月になるんですけど、その間に12回もイベントをやっているわけですよ。
―― ああ、気がついたら隔月ペースですね。
にいとP ええ。アマチュアのイベントとしてはものすごいペースでやっているんです。いいものを作るぞと意気込んで全力でダッシュしてきたし、そろそろ休憩も必要かと。
(次ページに続く)
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