いつまでアメリカ企業の買収を当局が阻止できるか?
アメリカ政府がどのような対応をするかはわからないが、正式な調査がない場合、次に同じような事態が起こったときは、疑惑を根拠に阻止することは難しくなりそうだ(ここ数日、HuaweiがフランスのAlcatel-Lucentを買収か? という噂が出ている。Alcatel-LucentはフランスのAlcatelとアメリカのLucentが合併した企業だ)。
というのも、Huaweiはそれ以前にも同じような疑惑を基に、アメリカ政府から横槍を入れられたことがあるからだ。2008年8月、HuaweiはSprint Nextelのネットワークインフラアップグレードに入札していたが、Sprint Nextelは政治家らの助言を受けてHuaweiを選考から落としたといわれている。
また、HuaweiはNokia Siemens NetworkによるMotorola Solutionの買収にストップをかけているが、そもそもMotorola買収を狙っていた際にやはり同じ疑惑が持ち上がったようだ。
Motorola SolutionとHuaweiは再販契約を結んでおり、MotorolaはHuaweiの3G機器を自社ブランドで販売していた。Huaweiは、Nokia SiemensがMotorolaを買収すれば自社の機密情報などの知的所有権が競合するNokia Siemensに渡ると主張、1月にMotorolaを提訴している。2月、米連邦地方裁判所はHuaweiの知的所有権の譲渡を禁じる判決を下したが、買収そのものについては禁止しなかった。
欧州ではアメリカほど懸念は広がらず
無線インフラでのトップシェアも見えてきたか
一方の欧州では、2012年のオリンピック開催に向けてインフラ整備を進めているイギリス地下鉄の無線機器供給の契約締結が近いとFinancial Times紙が報じている。イギリスはアメリカ政府がHuaweiに対して抱く懸念を、大きな問題とは思っていないようだ。
通信インフラ分野はここ数年再編が進んでいる。この分野の最大手はEricsson(スウェーデン)の一人勝ちで、残る大手はNokia Siemens(NokiaとSiemens)、Alcatel-Lucent(AlcatelとLucent)、のように生き残りをかけて合併した企業が続く。Huaweiは主として価格を競争力にシェアを飛躍的に伸ばしており、業界の再編を加速させている。
なお、無線インフラ分野でのHuaweiのシェアは、2002年には5%にも満たなかったが現在は約19%。Nokia Siemens(23%)に大きく詰め寄っている(数値はSociete GeneralSecuritiesのもの、Financial Timesの報道)。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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