その2:「ファンが求めるガンダムらしさ」との対話
機動戦士ガンダム00と、2つの「対話」 【後編】
2010年12月18日 12時00分更新
「わからないものがある」ことの発見
水島 25歳くらいのときかな。あるSF映画を観て、全然面白くないなと思ったことがあったんです。どうしてそのストーリーの運びになるのか、自分の考える「映画の常識」と合っていない部分があって、さっぱり面白さが分からなかった。でも、ある友人の映画評を見たら、面白いポイントがすごくわかりやすく書いてあって。彼の視点を頭に入れて、もう一回そのSF映画を観てみたら、ものすごく面白かったんですよ。
つまり、その映画には、僕が気付かなかったひとつの「法則」があった。それは理解という階段を一段「踏み出して」みなければ、わからなかったんですね。
そこでなぜ自分がこのSF映画の法則を見つけられなかったんだろうと考えてみると、映画に対して持った違和感を、最初からマイナスの感情で捉え続けてしまったからなんですよ。「見る側を混乱させるためだけに作ったのか?」みたいなマイナスな視点で見ているから、理解できない作品、理解できない自分に対してどんどんイライラしてくる。階段を踏み外すことで「痛い、痛い!」と思いながら上っているようなもので。
本当は、違和感が生まれたなら、そこには何か自分の知らない面白さが眠っているはずだという、宝探しのようなプラスの気持ちで見ていれば良かったんです。
それからは、映画が面白く思えなかったときも、タイトルだけ覚えておいて、あとで人の意見を聞いたりして、そういう視点があったのかとわかるまで面白さを探ることにしました。すると、どんどん映画に対してフラットな気持ちになって、どんな映画も楽しめるようになったんですよね。友人の映画評は、すごくいい体験でした。映画から何かを得ようとか、そういうふうに思い詰め過ぎないほうがいいということでもあって。
(c) 創通・サンライズ・毎日放送
―― 映画から何を得るかは、自分自身で見つけるものということですか。
水島 そういうことなんでしょうね。「あれはダメだ」で終わらずに、いろんな角度から物を見るようにすると、どんどん面白くなってくるんですよ。
それって映画だけじゃなくて、世の中のあらゆる事象についても同じなんだと思います。視野を広く持つと、いろいろなものが楽しく見えるようになる、というのは。相手が自分に何を訴えかけようと思っているのか? それを探るには、自分に「理解しよう」という気持ちがあることが大事なんでしょうね。映画でも人間関係でも何でも。
25歳くらいの頃は、人の意見はよく聞こうとか、だんだん意識するようになってきた時期だったんですけど、映画に関してだけは、「視点を変える」ということがなかなかできなかった。おそらく、自分のこだわりがすごく強い分野だからだと思うんですけど。
―― こだわりが強い分野に関しては、「自分が見たいもの」から離れるのは難しそうですね。
水島 そうですね。僕も、自分の見たいものを映画に投影していたわけです。けれど、映画の楽しみ方を知っている人間と出会ったことで変わった。こういうふうにあってほしいという自分のおねだりと、その映画が与えてくれるものとを分けられるようになったんですね。
自分が作るフィルムに関しても、若い頃は、そうあるべき理想のフィルムみたいなものが1つしかなかったけれど、いろんな視点を持つことで、もっといろんなアプローチができるなと気付いたんです。
(c) 創通・サンライズ・毎日放送
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