人口超大国である中国の就職フェアは、真夏の海水浴場か、はたまた通勤ラッシュかと思うほどすごい人だかりだ。近年中国において大学卒業生の数は年々上昇し、いよいよ大学を卒業しようが職にありつけない時代がやってきている。
政府はこの就職難に対して、「淘宝網」(TAOBAO)などオンラインショッピングサイトで店を経営せよ、と各マスコミを通じてアピール。職人気質の日本人には無理な相談だろうが、商人気質の中国人には「それ結構あり」という風に受け取られていて、アピールはそれなりに効果をあげている。
とはいえ就職難は解決していない。しかも学部学科別で就職状況を見ると、情報系学科の就職率が、中国文学や英語など文学系学科とならんで非常に厳しいものとなっている。
就職に関する調査を行なう「麦可思」によれば、「2010年最も就職率の低い学科」として「動画」「計算機科学技術」が、「就職率が急低下している学科」として「電子情報科学技術」「情報管理と情報システム」がランクインしている。
一方で「就職率と給与の増加が著しい学科」として、資源やインフラ系の学科が並ぶ。IT系学科は全くない。
大学に行くことが珍しくなくなった中国では、日本のようにどの大学のどの学科を目指すかについて明確な目標を立てず、試験の結果と「コンピュータ関係に就職するのが時代の流れかも」と、なんとなくなあなあに決める高校生(とその親)が圧倒的多数派だ。
中国の掲示板やブログでは「学習者が多いIT系学科なんか行くな。運輸インフラ系学んどけ」といった書き込みもちらほら見かける。
就職に関して、日本人と中国人で最も異なるのは、就職の概念だ。日本では「OJT」(On the Job Training)などを通し、ひとつの会社で経験を段々と積んでいき、日本人スタッフはその方法を受け入れる。
一方で中国人は自らのステップアップがため、次々に良い条件の企業に数年・数ヵ月単位で転職しようとするのが常識。会社としても社員が転職するのを前提に雇うのだから、経験を積ませるのは金と時間の無駄であり即戦力を求める。大学で幅広く基礎知識や概念を学んだだけの学生に用はないのだ。
何が何でも就職したいモチベーションの高い大学生は、1年のときから自らOJTを課し、ソフト会社でアルバイトをして実践力を身につけ、就職活動のときにやっと花開き勝ち組となる。
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