その2:ルイ・ヴィトン「エピノワール アタッシュケース」
衝動買いには、常に、衝動買いなりの理由が必要だ。単に「欲しい」だけではなく、「なぜ欲しいのか」や「どこが好きだから欲しいのか」という問いに答えられて、自分なりの納得感があれば、それが一般の人の理解から遊離していてもいいのが衝動買いなのだと思っている。
そんな人によっては「お馬鹿的」とも見えてしまう衝動買いの2番手が、ルイ・ヴィトンの「エピノワール アタッシュケース」だ。
黒のエピ革と、経年変化が表面に現れた真鍮金具のカラーコンビネーションは、他社のカバンではなかなか表現できない「味」を出してくれる。
筆者が真鍮と革を組み合わたトランクに初めてハマッたのは、伊豆のとある美術館で見た年代物のヴィトンのトランクだった。そのエイジングされた真鍮金具の美しさは、ほかに比べられるモノがないほど素晴らしかった。
現在の日本国内におけるビジネスピープル向けのカバンは、耐水処理した軽量でぺらぺらのブリーフケース系がトレンドになりつつある。一方ルイ・ヴィトンのビジネス・アタッシュケースは、そんなトレンドを、軽く鼻先で笑う自信とこだわりを持っている。
ルイ・ヴィトンがなぜブランドなのか、それは同社のトランクを買えば、自ずと理解できる。ビジネス・アタッシュケースは、伝統的なルイ・ヴィトンのクラフトマンシップを十二分に反映し、極めて丈夫で、極めて重く、極めて高額かつ、極めて反日常的だ。
購入以来、怖くて実際に、その重量を測定したことはないが、筆者が何個かコレクションしているゼロ・ハリバートンのアタッシュケースより重いことだけは確実だ。一泊二日の国内出張に行くだけでも、前の日から気合いと覚悟が必要だ。
しかし、そんなことを忘れるくらいに職人気質と品質の極みを感じられる素晴らしいカバンだ。ちなみに、国内外どこを持ち歩いても、同じカバンを持っている人に今までただの一度も会ったことがない。
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