シンプルなRIPの仕組み
RIP(Routing Information Protocol)は原理が簡単で設定が容易なため、もっとも普及しているルーティングプロトコルだ。
RIPの原理は「距離ベクトル(Distance Vector)型」と呼ばれ、宛先ネットワークまでに経由する距離が最短の経路を選択する。距離のことを「メトリック(数)」と呼び、基本的には経由するルータの数(ホップ数)で表現される。 では、RIPの動作を見ていこう。まず、各ルータは直接つながっているネットワーク(ローカルネットワーク)の情報を、自らのルーティングテーブルに登録する。このとき、ローカルネットワークのホップ数は“0”である。次に、自分のルーティングテーブルの内容を隣接ルータに通知する(図6)。
他のルータからRIPを受信したルータは、そのうち未知の経路情報をルーティングテーブルに追加する。このとき、ホップ数には1が加算される。そして、各ルータは、30秒ごとに自分のもつルーティングテーブルの情報を隣接ルータに通知する。この動作が繰り返され、一定時間が経過するとネットワーク内のすべてのルータにルーティングテーブルができあがる。
RIPは中小規模のネットワークでは使いやすい反面、大規模なネットワークで運用するには欠点の多いルーティングプロトコルである。
まず、ホップ数が最大で15という制限がある。また、経由する回線の速度などが考慮されず、あくまでホップ数の多寡だけで経路を判断するため、選択された経路が必ずしも最適な経路にならないこともある。
さらには、ルーティングテーブルの情報交換で生じるトラフィックが大きい、障害などでネットワーク構成が変更された時にネットワーク全体に情報が伝わる時間が長くかかる、サブネットマスク情報が交換されないため可変長のサブネットマスクを扱うことができない、といった欠点もある。
これに対してRIP2(RIPバージョン2)はRIP(RIPバージョン1)を改良したルーティングプロトコルで、RIPv2とも表記される。最大の特徴は可変長サブネットマスクに対応したことで、アドレス空間を効率的に利用するためのCIDR(Classless Inter-Domain Routing、サイダーと読む※5)に対応した。その他にも、マルチキャストを使用して経路情報のトラフィックを減らす、複数のルーティングプロトコルを併用する環境への対応、などの機能向上が図られている。
※5:CIDR 当初のIPアドレスには「クラス」という概念があり、先頭の4ビットの値によりネットワークアドレスの最大長が決められていた。CIDRはこの最大長の制限を取り去って、サブネットマスクの桁数を自由に設定できるしかし、ホップ数の多寡で経路が選択され、そのホップ数の最大値が15という制限は、RIP1との互換性のため変わっていない。このため、依然として大規模なネットワークには向かない。
(次ページ、「大規模向けのOSPFとは?」に続く)
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