前回、前々回とAMDのデスクトップCPUの話をしてきたが、今回はAMDのモバイル(ノート)向けCPUについてまとめてみよう。
第2世代K8のTurion 64から始まるモバイル向け製品
AMDの場合、モバイル向けの製品の歴史は意外と新しい。厳密に言うなら、「モバイル向けにAMDのCPUを使った例はかなり古くからあったが、ラインナップが拡充されたのは割と最近」と言うべきだろうか。例えばAthlon世代の「K7アーキテクチャー」の場合、「Mobile Athlon」や「Mobile Duron」という製品が用意され、メインストリーム向けにそこそこ採用事例もあった。またその前には、「K6-2」を無理やりノートに入れたり、もっと古い話では「Am386」系CPUをノートに使った例もあった。
しかしK8アーキテクチャーに移行した当初は、あまりに消費電力と発熱が多すぎて、到底メインストリームノートに採用するのは無理だった。動作周波数を下げた製品を無理やり「Mobile Athlon 64」と銘打ってDTR(DeskTop Replacement:デスクトップ代替ノート)向けに出荷したりはしたこともある。しかし、これは名前のとおり形状こそノート型ながら、実体はデスクトップ向けCPUとさして変わらない大きさや重さで、到底モバイル向けとはいい難い代物だった。
この状況が変わるのは、2005年に「Turion 64」をリリースしてからだ。90nm SOIの第2世代K8に属する「Lancaster」は、2GHz程度の動作周波数で25~35WのTDP枠に収まるCPUで、ようやくメインストリーム向けのノートに搭載できる製品が登場した。ちなみに、当時はまだデスクトップの「Socket 754」向けパッケージをそのまま流用していた。
これに続き、同じ90nm SOIを使うデュアルコアCPU「Taylor」「Trinidad」が、「Turion 64 X2」というブランドで登場する。この両者の違いは、コアあたりの2次(L2)キャッシュ容量が、256KB(Taylor)か、512KBか(Trinidad)の違いだけである。パッケージは従来のSocket 754から、モバイル向けの「Socket S1」に切り替わる。
順序的には逆だが、この2者に続いて、LancasterのSocket S1版が「Richmond」と言う名で登場する。Richmondは仮想化機能「AMD-V」を搭載するなど、Lancasterから内部的にも若干改良されている。このTurion 64 X2の登場により、メインストリーム向けCPUはデュアルコアCPUのみとなり、シングルコアのTurion 64はここで打ち止めとなってしまう。
一方でその後のシングルコアは? と言うと、Richmondの2次キャッシュ削減版が、「Mobile Sempron」として2006年5月にリリースされる。Richmondは90nm SOIシングルコアの最後の製品なのだが、他のコアのベースになったにも関わらず、登場時期は1番最後になってしまった。
2007年5月には、65nm SOIプロセスに移行した「Tyler」が登場する。このTylerがTurion 64ブランドの最後の製品となる。また、同じTylerコアを使いながら動作周波数を低めに抑え、消費電力も下げた製品が「Athlon 64 X2 Dual-Core for Notebooks」というブランドで、Tylerと同じ2007年5月にリリースされた。
パッケージや内部構成はTylerなので、これを搭載したノートなどもあったようだが、こちらはAthlonの名前が示すように、実はデスクトップ向けだ。スモールフォームファクターの省スペースデスクトップのように、ノートとほとんどTDPが変わらない省スペース向けにリリースした製品である。
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