お客様のイメージを具体化する
事業戦略の枠組み3C(Company,Customer,Competitor)を考えることで自社の事業戦略に勝ち目があるのかどうかを大まかに判断できます。たとえば、当社はコンサルティング会社ですが、当社の3Cを大まかに考えると下記のように定義できます。
●自社 インターネットビジネス専門のコンサルティング会社
●お客様 インターネットビジネスに取り組んでいる企業
●競合 インターネットコンサルティング会社
このように定義したところで、当社がこの業界で勝ち残っていけるのか、日本でNo.1になれるかどうかは見えてきません。定義する3Cの範囲があまりに広いからです。そこで、もう少し絞り込んで具体的にします。
具体的に考えるためにはユーザーのニーズを軸に具体化していくのがよいでしょう。たとえば、インターネットビジネスに取り組んでいる企業でもコンサルティングを利用するシーンはいろいろ考えられます。
「数十人のスタッフを抱えているが、スキルが足りないので教育してほしい」という企業、「自分一人でネット通販を始めたいが、アクセス対策や制作など全部はやれないので専門技術が必要な分野はアウトソースしたい」という企業など、いろんなニーズがあります。これらをあれやこれや考えていくと、たとえば企業規模や売上規模によってニーズが異なったり、またBtoBやBtoCで異なったり、立ち上げ期か成熟期か、で異なったりします。
それでは、当社にとって最適なお客様とはどんなお客様でしょうか。それには当社の強みを再確認します。
当社の強みは大規模な案件の実績が多いこと、また広い範囲でノウハウを持っていることです。逆に弱みとしては小規模案件の実績が少なく、特に現場運用などの細かい経験が少ないことです。そう考えると、やはり同じような大規模な案件が得意でしょう。また、広範な守備範囲を考えると、部分部分で携わるよりも全体を丸抱えできる立ち上げ期が得意です。そこで、当社のお客様と強みを絞り込み、下記のように定義します。
●お客様 大規模ネットビジネスの立ち上げ期の企業
●自社 大規模広範囲ネットビジネスの立ち上げ支援コンサルティング
そうなると、競合の幅も狭まります。大企業向けに広範なコンサルティングを行うとなると競合企業も大企業が増えますが、それらの企業と比較するとはるかに安価で、スピードも速いことが強みです。逆に弱みとしては企業規模が小さいことから、制作や運用アウトソースを丸抱えすることはできないという点です。
以上のように定義すると、自社の強みとお客様のニーズ、競合に対する勝ち目が明確になります。
このような一連の流れは典型的な考え方で、一般的にセグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)、略してSTPと言われる考え方です。
STPの出発点は、顧客のニーズがどのように分類されるか、ということです。その中で自社の強みを発揮できる分類軸を見つけ出し、その分類軸に沿って顧客を分類します(セグメンテーション)。分類した顧客のグループの中で自社に最適なグループを決定し(ターゲティング)、その顧客ニーズの中で競合と比較してどんなシーンで強みを発揮できるのか(ポジショニング)を明確にします。このストーリーが矛盾無く成立することを確認し、商品の設計に入ります。
このセグメント、ターゲット、ポジションを決めることが各企業の戦略になります。自身の強みを生かしながらより規模の大きなマーケットをターゲットにするためにどのような分類をし、誰に対してどのような強みを発揮するか、この設計次第で、自社の強みがどのくらい生かせるのか、どのくらいの事業規模になるのかが決まります。
上記の事例のように、商品が柔軟に変更できるサービスであれば、最適なユーザーのために最適な商品を設計し、提供することが容易です。しかし、ネットショップでは商品はサービスでは無い製品で、さらに仕入品であることが多いと思います。そうなると、商品そのものがある程度ターゲットを設定して製品化されていますから、同じ商品を売るのにセグメンテーションを分けることはもう少し難しくなってきます。
そこで考えなければならないのが商品の見せ方、伝え方です。同じ商品でもその見せ方や、紹介するタイミングで異なる価値を感じます。たとえば“ハンカチ”を売ることを考えます。プレゼント用と自宅用で購入する際に重視するポイントが違うでしょう。また、何枚ほしいか、1個当たりの金額なども違います。これを最適にしていくことで、購入者が感じる価値が大きく変わるのです。
さらに、それを提供するシーンや伝え方も重要です。プレゼント向け高級ハンカチを自宅用のタオルなどと一緒に紹介しても響きませんが、お誕生日プレゼントを探している人に誕生石やメッセージカードを探しているシーンで紹介する方が興味をもつ可能性が高そうです。このように、商品を設計する際は見せ方と伝え方も一緒に設計する必要があります。
特にネット販売においては検索エンジンからどのようなキーワードで誘導するかでユーザーのシーンが大きく異なります。たとえば、家具を売る場合でも雑貨品と一緒にインテリアとして販売するのか、“本棚”など機能性を打ち出して販売するのかでその購入シーンが大きく異なります。要は、ユーザーの視点で商品を探すシーンから購入するシーンまでのシナリオをなぞり、ユーザーに明確に価値が伝わるように設計することです。
著者プロフィール
名前 | 権 成俊(ごん なるとし、左)、李 泰成(り やすなり、右) | info[アットマーク]gonweb.co.jp |
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