一体型機ならではの魅力を再確認しよう
レンズ交換式一眼レフデジタルカメラの低価格化が進み、ボディーのみで6万円台で購入できる機種も出てきている。そのため、実売で10万円近辺のハイエンドコンパクトカメラは、やや微妙な位置に立たされている。確かにレンズ交換による拡張性や、銀塩時代から継承された豊富なアクセサリー群などでは一歩譲る部分もある。しかしながら、撮像素子に最適なレンズ設計、液晶ビューファインダーやバリアングルディスプレーによる自由度の高い撮影ポジションなど、一眼レフ機にはない操作感を提供する製品も少なくない。
ここではソニー、松下電器産業、コダック、キヤノン、リコーから「筆者がこれならば!」と思える製品をピックアップして使ってみた。それぞれの特徴に関しては後述するが、まず最初に「なぜいま一体型機なのか?」という部分に関して、カンタンに触れておきたい。
最初のメリットはワンボディーで完結している点である。レンズ交換は一眼レフ機のメリットなのだが、交換用のレンズを持ち運ぶのは意外にかさばるし、レンズ交換時にCCDにホコリが入ってしまうこともある。ボディー自体の価格は安くなっても、幅広いシチュエーションに対応できるレンズを揃えるためには相応の出費を覚悟しないといけない。
また、ミラーボックスやレンズマウントの制約がないため、レンズ設計の自由度が高いのも利点である。例えば、ソニーの「DSC-R1」の場合、バックフォーカス(レンズの最後端から撮像素子までの距離)を極限まで短くすることによって、24mm相当の広角でも歪みの少ない高品質なズームレンズを開発している。また、松下電器産業の「DMC-FZ30」(35~420mm相当)やキヤノンの「PowerShot S3 IS」(36~432mm相当)は光学12倍ズームをサポートし、さらに光学式手ぶれ補正まで利用できる。超望遠と手ぶれ補正つきの一眼レフ用レンズをこの価格とサイズで手に入れるのは難しい。
バリアングル液晶ディスプレーの利用例 |
操作感に関しては液晶ビューファインダー(EVF)を搭載した機種であれば、一眼レフ機のファインダーをのぞくのとほぼ同じ感覚で撮影を行なえる。ファインダーの見やすさでは実像を見る一眼レフ機に軍配が上がるが、EVFの視認性も上がっている。EVFでは視野率が100%となるし、暗い場所でも撮影情報や被写体を確認しやすいというのはメリットだ。エントリークラスの一眼レフ機では視野率が85~95%程度となるため、実際に撮影される画像は見た目より広い範囲となる。また、上に述べたように、フリーアングルタイプの液晶ディスプレーを装備して、ハイアングル/ローアングルの自在な撮影が可能な機種もある。1台で動画と静止画の撮影が行なえるため、子供やペットなど被写体の動きや音声も残しておきたい場合などに便利である。
撮像素子の小ささなどハンディーはあるが、画質面でも一眼レフ機に肉迫した製品が存在する。ソニーのDSC-R1のようにエントリー一眼レフ機を凌ぐパフォーマンスを持つ製品も登場している。このあたりは、別記事のサンプル比較を参照いただきたい。また、DSC-R1やコダックの「EasyShare P880」は24mm相当からの広角ズームを搭載する。
一眼レフ機の世界でもライブビュー機能を搭載した、オリンパスイメージングの「E-330」のように、一体型の操作性とレンズ交換式の拡張性を兼ね備えた製品が登場している。ワンボディーで完結した操作性の良さ、専用設計だから実現できるとんがったスペックといった一体型機の魅力をここで、もう一度見直してみてはいかがだろうか。