マイクロソフト(株)は24日、都内オフィスにて月例のプレスセミナーを開催し、同社の電子政府や電子自治体に対する取り組みについて、同社執行役公共インダストリー統括本部長の大井川和彦氏が説明を行なった。大井川氏は同社以前は経済産業省に在籍し、2年前から同社に移り、2004年7月から現部門で政府・自治体向けの取り組みを行なっている。
執行役公共インダストリー統括本部長の大井川和彦氏 |
“e-Japan戦略”の経過 |
電子政府・電子自治体を実現する意義 |
大井川氏は、電子政府・電子自治体の意義と達成すべき目標として、行政サービスの改善と向上、高い生産性の確保と効率化、コストの削減の3点を挙げている。しかし現状では、住民サービスの向上や地域の活性化はまだまだ進んでおらず、ITの有効活用したことによる行政のパフォーマンスを正しく評価することが不足し、十分な低コスト化や投資対効果が得られていないのではないかと指摘し、このような状況の背景には、レガシーマイグレーションがなかなか進展しないIT調達の硬直化、調達、利用の両面における行政側のITリテラシーの未成熟、セキュリティー問題といった課題があるとしている。
同社では、これらの課題を解決するための方向性と、同社としての具体的な取り組みや提案を以下のように示した。
- より開かれた調達の実現
- “COTS”(Commercial off-the-shelf。“棚から取ってすぐ使える”の意)の推進
- サービス志向アーキテクチャー(SOA)の推進
- 相互接続性を確保した“オープンスタンダード”の提供
- ITリテラシー向上支援
- システム調達担当者向けの実効的な仕様書作成に必要な知識習得の支援
- 職員全般に対する、業務における生産性向上に向けた支援
- 安全な情報基盤の整備
- ソフトウェア開発企業としての責任ある対応(製品やテクノロジーの開発における積極的な投資、内閣官房や総務省、経済産業省、警察庁といった関係省庁とのパートナーシップの強化、教育や啓発活動の展開)
オープンスタンダードへの対応の必要性と意義。オープン化によりIT調達の硬直化を解消することのメリットを説明している |
同社は安全な情報基盤の整備においては政府・自治体との連携を強調しているが、大井川氏はその一環として、マイクロソフトのグローバルな取り組みである政府向けのセキュリティープログラム“Government Security Program”を紹介した。これは、マイクロソフトと各国政府との関係構築のためのフレームワークのひとつで、各国政府におけるWindowsプラットフォームに対する信頼の向上のため、ソースコードや技術情報を開示、提供するというもの。現在、オーストラリア、中国、台湾、イギリス、イタリア、スペイン、ロシア、エジプト、チリ、北大西洋条約機構など40の国や地域、団体が参加しており、日本政府にも参加を呼びかけており、意見交換が進んでいるという。
またこのほかにも、政府・自治体を対象としたパートナーエコシステムの確立や、地域産業振興に向けた官民連携、標準化団体・協議会活動への参加、社会的課題解決に向けた協力、人的交流機会の提供と拡大といった取り組みを通じて、政府や自治体との関係の強化に努めるとし、ソフトウェア企業としての責任ある立場でのパートナーシップ作りと、オープンで柔軟なシステムを提供することによる貢献を果たしていきたいと述べている。
大井川氏は自身の省庁勤務時の経験から、IT活用の進んだマイクロソフトと、IT活用が未発達な省庁との“仕事の密度”の違いを取り上げ、一般の職員のITリテラシーの向上により、省庁業務の大幅な効率化は可能だとの見解を示した。また、政府や自治体、省庁などでは、効率化やシステムの見直しなどによるコストの削減が、評価に直結せずに来期予算の単純なカットにつながってしまう点にも、レガシーマイグレーションの進展やIT積極活用の遅れにつながっているとして、予算や人事制度の抜本的な改革の必要性も指摘している。