日本アイ・ビー・エム(株)は2日、米IBM社が現地時間の1日付けでカーボン・ナノチューブを利用した世界最小の固体発光素子を開発したと発表した。
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トランジスターのソース電極とドレイン電極の間をカーボン・ナノチューブで結ぶ構造の両極性素子を開発 |
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ソース電極から電子を、ドレイン電極から正孔を同時に注入する |
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正と負の電荷がナノチューブ内で再結合して発光する |
カーボン・ナノチューブは、炭素原子で構成される、太さが平均的な人間の毛髪の約5万分の1の円筒状分子。開発した発光素子は、3端子のトランジスターに組み込まれた直径1.4nm(ナノメートル)の単一のナノチューブ。一般的なトランジスターは“ゲート”“ソース”“ドレイン”の3個の端子を持ち、ゲートに低い電圧をかけることにより、ソースとドレインの間を流れる電流を制御できるようになっている。同社では、ソースとドレインの電極間をカーボン・ナノチューブで結ぶ構造を持つ“両極性(ambipolar)”素子を開発し、ソース電極から負の電荷(電子)を、ドレイン電極から正の電荷(正孔)を、同時に、ナノチューブ内に注入できるようにした。電子と正孔がナノチューブ内で出会うと、電荷が再結合して発光する。同社では、光通信で重要な1.5μmの波長を持つ赤外領域の光を検出したとしており、ナノチューブの直径を変えることで異なる波長の光を生成できるという。同素子は、ゲートにかける電圧で発光をオン/オフできるのが特徴で、ナノスケールの光素子を、カーボン・ナノチューブやシリコンの電子素子に組み込めるようになるとしている。