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『フリーソフトウェアイニシアティブジャパン』本格始動!

2002年07月10日 23時38分更新

文● 編集部

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「フリーソフトウェア」の概念規定

FSIJの提起する「フリーソフトウェア」は、以下に挙げる4つの自由の概念を含むものであると定義されている。

  • 目的を問わずプログラムを実行する自由
  • プログラムがどのように動作しているか研究し、必要に応じて修正を加え取り入れる自由
  • 身近な人を助けられるよう、コピーを再配布する自由
  • プログラムを改良し、コミュニティ全体がその恩恵を受けられるよう、改良点を公衆に発表する自由

FSIJは、上記4つの概念に従ったものであれば、GNU GPLに基づいたソフトウェアでなくともフリーソフトウェアであると認めている。また、これらの自由は文書にも準用され、そのようなドキュメントは「フリードキュメント」と呼ぶとしている。

ここに挙げられている「フリーソフトウェア」の定義は、米Free Software Foundation(以下、FSF)のRichard M. Stallman氏が提唱しているもの。日本では、この「フリー」は言論の自由に近いものであるといい、文化的な背景などから、最初の3つが実現されており、4つ目の項目の重要性が理解されていると考えられるならば、「フリーソフトウェア」ではなくともプロジェクトの支援などを行なうとしている。また、今後はこのようなフリーソフトウェア理解を共有する組織や団体との協業も検討しているほか、音楽やテキストなど、コンピュータのソフトウェア以外の分野で「フリー」を目指す団体とも交流を図る考えもあるようだ。

FSIJの具体的な活動

FSIJは、特定非営利活動促進法に基づき、社会教育の推進をはかる活動、文化、芸術およびスポーツの振興をはかる活動、国際協力の活動を行なう団体として認証を受けている。

FSIJの活動は、ソフトウェアを工業製品としてではなく、より人間に近いところでの知的な営みであるととらえ直すこと、ソフトウェア開発に関する知識を独占することによる、開発の停滞やセキュリティ上の問題を解決すること、フリーソフトウェアにかかわるボランティアの活動が組織化されないため継続的に行なわれなかった問題を解決するといった問題意識にもとづいているという。そのため、エンジニアの意識改革や情報提供、国際協力だけでなく、企業、行政といった組織と並ぶ市民団体として社会的な問題の解決を目指すとしている。具体的な活動内容は以下のとおり。

  • ソフトウェア技術の啓発、開発者・利用者の支援
  • フリーソフトウェアおよびフリードキュメントの情報収集と配信
  • フリーソフトウェアの個々の活動を連携し、プロシューマーとして共通コミュニティを形成
  • 日本発の優秀な創作フリーソフトウェアのデータベースを構築、発信
  • 国際的な交流を支援
  • 技術セミナーを開催

ほかに、継続的な活動のために不可欠な収益事業として調査、研究、コンサルティング、グッズ販売などを行なう。

これらの活動のうち、具体的に予定があり言及されたのは、データベース構築と技術セミナーに関するものだ。データベースについては、すでにサーバとネットワーク回線は用意されているといい、あとはデータが集まれば公開できるようだ。SourceForge.jpとの違いについて鈴木氏に聞いてみたところ、特に大きな違いはないが、日本のソフトウェア開発は外部から見たときに状況が分かりにくい点を問題としており、主に情報発信機能を強調したものになるようだ。

技術セミナーについては、10月21日にDebianの活用やフリーソフトウェアを用いたセキュリティ、カーネルに関する技術セミナーを行なうほか、10月22日、23日には国際シンポジウムを行なう予定であることが発表された。

FSIJ会員募集中

また、FSIJは本日付けで会員の募集を開始している。会員は趣旨に賛同する人であれば、特に制限は設けられていない。会員だからといって必ずしもフリーソフトウェアを利用しなければならないというわけではないそうだ。会員には正会員と賛助会員が設けられ、正会員は、予算や定款の改正を行なう総会での表決権を持つ。

正会員、賛助会員の会費は以下のとおり。

  • 個人正会員……入会金3000円、年会費7000円
  • 個人学生正会員……入会金1000円、年会費4000円
  • 団体正会員……入会金1万円、年会費3万円
  • 賛助会員……一口3万円

入会はFSIJのWebサイトにあるフォームを通じて行なうか、郵送で行なうことになる。


FSIJは、あえて「ファウンデーション」ではなく「イニシアティブ」という名称にしたという。それはフリーソフトウェア開発自体を単に支援するにとどまらず、フリーソフトウェアを通じて社会的な問題解決を目指すという姿勢の現われだろう。今後どのような活動を展開するのか注目していきたい。

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