米サンフランシスコにおいて6月5日から9日の5日間(現地時間)、米サン・マイクロシステムズ社主催のイベント“JavaOne
2000 Conference”が開催された。同イベントでは、Javaテクノロジーをテーマに150以上の技術ディスカッションやセッション、展示会などが開催されている。
7日午前には、サンのジョン・ゲイジ(John Gage)チーフ・リサーチャーがホストを務め、ビル・ジョイ(Bill
Joy)チーフ・サイエンティスト、ジェームス・ゴスリング(JamesGosling)副社長兼フェローが8000人の聴衆を前に基調講演を行なった。
開演時、D'CuCKOOの打楽器とボーカルによる演奏が行なわれ、そこに登場したゲイジ氏が“the Java”のナンバーでダンスを披露した |
“ムーアの法則”の崩壊を防ぐナノテクノロジー
サンの共同創立者としても知られるジョイ氏は、「エレクトロニクス産業は、この40年間、ムーアの法則に従って動いてきた。だがこのままであれば、10年後にはムーアの法則*も崩壊することになるだろう」と語った。半導体工業会(ISA)の昨年の報告によれば、早ければ15年後にはチップメーカー各社が性能強化の限界を迎える見通しだという。*ムーアの法則:インテル社の創設者の一人であるゴードン・ムーア氏が説いた法則で、シリコンチップは価格を据え置きながらトランジスター数(処理能力)は18ヵ月ごとに倍増するというもの。
サン創設者の一人であるジョイ氏は、UNIXの育ての親でもある。BSD、NFS、RISC、SPARC、Jiniなど、数々の新技術を開発し、業界のオープン化に務めた。UNIXで標準のテキストエディター『vi』の開発者としても知られている |
ここで今、注目されているのが、ナノテクノロジーだ。「ここ数年、物理学者や化学者たちは、分子の電気特性に関する研究を続けている。ナノテクノロジーがチップ開発に応用できれば、ムーアの法則の崩壊は20年から30年、先延ばしにすることができるだろう」と、ジョイ氏は予測した。
さらにナノテクノロジーは、デバイスを際限なく小さく、安価にする可能性を秘めている。「将来、飛行機はブラックボックスを積まなくなるだろう。高度なナノテクノロジーにより、飛行機をペイントする塗料自体がブラックボックスとなるからだ」――。
6つのウェブ環境で成功を収めるJava
ジョイ氏は、Javaが活躍するウェブ環境を6つに分類した。このうち、キーボードやマウスを搭載した“デスクトップ”や、リモートコントロールが可能な“インターネットテレビ”は、現在もっとも熟したウェブ環境だ。「だが今後は、“携帯電話やPDA”などの無線機器が有力だ。有線では、車などを“音声で操作するウェブ環境”が伸びるだろう」と、ジョイ氏は予測を述べた。“電子商取引”は、B2B(企業対企業)やB2C(企業対消費者)に焦点を当てたJavaやXMLによって運営されている。また、“センサーの組み込み”では、Jiniテクノロジーが使用されている。これら6つのウェブ環境でJavaプログラムを開発する企業について、「数千以上の数となり、数百億ドル単位の売り上げを上げている」と、ジョイ氏はJavaがビジネスとして大きな成功を収めていることを強調した。
リアルタイムJavaのデモを披露
副社長のゴスリング氏は、5月31日に米国で出版された“The Real-Time Specification for Java”を紹介した。同書はゴスリング氏を含む6人の共著で、リアルタイムJavaに関する情報が網羅されている。ステージ上では、'96年から2005年までのシリコンバレーを舞台にした“Java物語”が披露された。ゴスリング氏に扮した役者が殺虫剤で“ポケットPC”を粉砕し、ヒーローとなるというストーリーだ。最後はマンボ“Java No.5”を歌い上げ、幕となる |
ステージ上で“The Real-Time Specification for Java”を紹介する本物のゴスリング氏(右)。同氏は、JavaやNeWSの開発者として知られている。左は、基調講演のホストを務めるゲイジ氏 |
ゴスリング氏はリアルタイムJavaのデモを行なうのに、Agile Systems社のCTOであるデビッド・ハーディン(David
Hardin)を壇上に招いた。ここで紹介されたのは、リアルタイムJavaによる組み込みロボットシステム。リアルタイムJavaの制御により、2本のアームが、箸を使ってキーボードを演奏するというもの。
ハーディン氏は、「このシステムは、リアルタイムJavaの可搬性、生産能力、保護性能、処理能力を調べるためのものだ。ここで得たデータや技術を応用し、ゴミ収集や処理を行なうロボットを作りたいと考えいてる」と述べた。
Agile Systems社のハーディン氏、手前に見えるのがリアルタイムJavaを用いた演奏ロボット |
次に登壇したのは、FireDrop社のサミール・ミトラ(Samir Mitra)ジェネラルマネージャー。同氏は、送信済みのメールをアップデートするシステム“Zaplet”のデモを行なった。
Zapletは、ユーザーが電子メールを開くたびに、メーラーがFireDropのメールサーバーからその内容を取得する仕組み。つまり、同じ電子メールであっても、開くたびに新しい内容に更新されるというものだ。
FireDrop社のサミール・ミトラ氏(右)もステージに登場した |
XMLは予想以上に早く受け入れられた
基調講演の最後に、ゴスリング氏とゲージ氏に、CTOのグレッグ・パパドペロス(Greg Papadopoulos)氏、XMLテクノロジーセンターのジョン・バサック(Jon Basak)氏が加わり、JavaとXMLをテーマにしたセッションが行われた。その中でバサック氏は、「XMLが世の中にこれほど早く受け入れられたことに、正直、驚いている」と語った。XMLが標準化されたのは'98年の2月のこと。来年のJavaOne Conferenceで、ゴスリング氏やゲイジ氏が、Javaに関してバサック氏のXMLと同じような感想を述べる可能性に、期待をしたい。
ステージ上でセッショントークを行なうパパドペロス氏、バサック氏、ゴスリング氏、ゲイジ氏(左から) |