15日、大阪南港ATCホール(アジア太平洋トレードセンター内)で開催している“COMMUNET'99(COMMUNICATIONS
and NETWORKING EXPO'99)”――マルチメディア・ライフスタイル in Kansai、2日目のセミナーレポートをお届けする。
コーディネーターに伊丹市教育委員会事務局の学校教育部伊丹市立総合教育センター指導主事である畑井克彦氏を迎えてのセミナーは、“ネット社会における学校と教育”というテーマで行なわれた。
セミナー会場 |
コーディネーターを務めた伊丹市立総合教育センターの畑井氏 |
“夜空の出前”――インターネットで天文観測
前半はインターネット天文台として世界的に有名な、みさと天文台天文台長の尾久土正己氏が、これまでの活動と地域とのかかわり合いについて語った。
後半は97年から神戸マルチメディア・インターネット協議会(KMIC)が神戸、伊丹、播磨地方で実施している、“NetDay”活動の考え方や、今後の展望についてのディスカッションが行なわれた。
'95年、自治体主体の天文台としてオープンしたのが、みさと天文台(和歌山県海草郡)である。関西国際空港から直線30kmの圏内にありながら、当時生活インフラのあまり整っていないこの地を訪れた尾久土氏は、とにかくインターネットと提言したそうである。
みさと天文台天文台長の尾久土氏 |
理科系の学校教育の中で、唯一、授業中に実験観察ができないのが、天文学の分野だという。子供たちは星空に興味があっても当然ながら昼間は観察できない。では、地球の裏側の望遠鏡の映像をインターネットを通じ、授業中に観測してはどうか、という発想で始まったのが“夜空の出前”である。
また日食などの観測映像を、地球の各地からインターネットを使い発信するという活動もボランティアベースで進めており、最強の天文中継チームとして世界中の注目を集めている。今年最後の天文イベントは11月17日の流星群。この日は日本、北米、ヨーロッパの3地域に観測員を派遣し、世界中で一番いい映像をお届けしたいと尾久土氏は語った。
これらみさと天文台の活動は10月に岩波書店が“美里から世界へ―インターネット天文台”として出版する。
地域に根差したコミュニティーの場を形成する“NetDay”
“NetDay”の活動について、神戸マルチメディア・インターネット協議会会長の田中克己氏(神戸大学教授)と、同理事の永吉一郎氏((株)神戸デジタル・ラボ代表取締役)によるセッションが開かれた。神戸大学教授の田中氏 |
神戸デジタル・ラボの永吉一郎氏 |
“NetDay”とは、いわゆる学校にインターネットを引こう、という活動だけではなく、学校を中心とし子供と学校、保護者の三者による、地域に根差したコミュニティーの場を形成していくというものである。最初はどうしてもボランティアによるネットワークの敷設というハード面がクローズアップされがちだが、今後は、その確立されたネットワークを使い、どのように学習やコミュニケーションに利用していくかという、コンテンツ面にテーマがシフトしていく。
神戸を中心に行われた“NetDay97”、“NetDay99”では、まず、小学校の各教室までのネットワーク敷設をボランティアベースで実行した。そうしながら、敷設終了以降にイベントを開催し、地域の各小学校や、海外の小学校を映像中継で結び小学生同士のコミュニティー作りや、研究発表を行った。
今後は地域ごとに活動されている“NetDay”を支える人たちの、世界的規模でのシンポジウムを開催したいとの抱負を語った。
神戸マルチメディア・インターネット協議会(KMIC)出展ブースの前で。右から神戸大学教授 田中氏、神戸デジタル・ラボの永吉氏、伊丹市立総合教育センターの畑井氏、左から2番目の女性は神戸マルチメディア・インターネット協議会(KMIC)事務局の松本さん |
Linuxビジネスの展開のキーワードは“小さいLinux”、“大きいLinux”
午後からはLinux特別講演とし日本Linux協会会長 生越昌己氏のセミナーが開催された。Linuxビジネスに関し世界的な視点での内容は非常に興味深いものであった。Linux特別講演セミナー会場 |
日本Linux協会会長の生越氏 |
Linuxビジネスの場合、どんなOSであるかという、Linuxの特性を理解することが非常に大切であると強調した。
今後のLinuxビジネスの展開としては“小さいLinux”、“大きいLinux”というキーワードを用い、前者は組み込みに特化したものとして、汎用ではなく情報端末のように専門のソフトを動かす方向。後者はいわゆるメーンフレーム近くまでに信頼性を極めた方向として、今後の可能性の1つを示唆した。