東京・新宿の京王プラザホテルで“第8回 OpenGL Japan
セミナー”が開催された。このセミナーは、3次元CG技術である“OpenGL”に関する最新状況と技術を紹介するもの。主催は(株)ケイ・ジー・ティーと(株)エヌ・ケー・エクサ。
セミナーは2つの会場を使い9講座開かれた。今回はその中から2講座を紹介する。
会場の様子、会場は和やかな雰囲気だった |
Fahrenheitプロジェクト
マイクロソフト(株)、マルチメディアテクノロジーグループの川西裕幸氏は“DirectXをCADやビジュアリゼーションに拡張するFahrenheit Scene Graph”という題目で、マイクロソフトの3次元への取り組みについて紹介した。マイクロソフト(株)の川西氏 |
“Fahrenheit”は、'97年12月に発表された米マイクロソフト社と米SGI社の共同プロジェクト。グラフィックスの統合型API開発を目的にする。“Fahrenheit
Scene Graph(FSG)”は、この共同開発の成果第1弾となる。FSGはDirect3D、OpenGL、Fahrenheit
Low Level(FLL)(*1)の上位にあたるAPIで、CAD/CAEや科学計算、バーチャルリアリティーなどのプロ向けアプリケーションの開発をターゲットにしている。
(*1) Fahrenheit
Low Level(FLL):マイクロソフトが来年にリリースを予定している“Direct3D
8.0”そのもの。OpenGLの技術を取り入れており、これ以前のDirect3Dと互換性を持つがOpenGLとの互換性はない。
川西氏「FSGは、より簡単で、より高速なグラフィックスを実現しようというコンセプトで開発した。多数のファイル形式のサポートや、ハードウェアに合わせた動作設定の最適化が図れるようにしてある。ゴールは、OpenGLとDirect3Dの両方をサポートし、Windows、IRIX、HP-UXなど複数のシステムで稼動できること」
FSGはオブジェクトを複数の階層構造で管理できるほか、マルチプロセッシングのサポートや、今後の新しいハードウェアの登場に対応できるよう拡張機能を搭載している。
川西氏「FSGはオブジェクトに含まれる個々のポリゴンを意識しない。したがってプログラマーはどのように描くかではなく何を描くかという部分に集中できる」
マイクロソフトでは、FSGのリリースと同時に、FSGをカスタマイズし拡張できる“EDK(Extension
Development Kit)”をリリースする。また、衝突検知機能や2Dスプライト機能を提供する“Fahrenheit
ゲームエクステンション”、ミッドレンジパソコンでギガバイト(GB)サイズのデータを取り扱うための“Fahrenheit
ラージモデルエクステンション(FLM)”という計3種類の拡張キットをリリースする予定という。
FSGのアーキテクチャー |
FLMは、FSGにハイエンド向けの拡張機能を付加するエクステンション。3次元オブジェクトから、表示されない部分のポリゴンデータを間引く“閉じ込めカリング”や、詳細に表現しなくてよい部分を少ないポリゴンでおおざっぱに表現する“単純化”、表示品質を保ったままポリゴン数を減らしデータ容量を削減する“ポリゴン削減”などの機能を搭載している。
川西氏「3月に開始したFSGのアルファテストで、有効なフィードバックを多数得られた。ベータテストは今年の秋に開始する予定だ。多くの企業にベータテストに参加してほしい」
組み込み型のOpenGL
米Seaweed Systems社のRobert Schulman(ロバート・シュールマン)氏は“Enbedded OpenGL”という表題で、組み込み型機器におけるOpenGLの利用法を紹介した。米Seaweed Systems社のSchulman氏 |
Schulman氏「組み込み型機器とは、一般のユーザーが、コンピューターであることを認識せずに利用する機器のこと。CTスキャナーや、飛行機のナビゲーションシステム、軍事用の戦車シミュレーターなどが代表的な例だ。組み込み機器は、起動が速くてリアルタイムに利用できなければ意味がない。従って、バーチャルメモリーやストレージデバイスの類は搭載しない」
「組み込み機器という小さなシステムに、なぜ大きなOpenGLを搭載させるのかと疑問に感じる人も多いだろう。OpenGLを利用しているユーザーはほとんどがパソコンユーザーだ。しかし、中にはパソコンを利用せずにOpenGLを利用したいというユーザーもいる。そういう客の需要に応えるが目的だ。また、OpenGLはプラットフォームを選ばないため、WindowsやUNIXを利用した開発が比較的容易である」
Schulman氏は、同社の開発した組み込み型のアプリケーションを紹介した。戦闘機で利用される情報表示システムでは、機体の傾きや高度などを表示する際の、傾いた文字の表示などにOpenGLを利用している。
戦闘機の情報画面 |
航空機の超音波レーダーの画面。元は格子状の画像を計算で変形させて表示する |
OpenGLの今後は
米SGI社のTechnical Marketing,Workstation DivisionのJohn Schimpf(ジョン・シンプ)氏は、今後のOpenGLに関する計画について次のように語っている。「2000年の1月には、Windows 98/2000に対応するOpenGL 1.2 ICDキットをリリースする。また、複数の画面への出力をサポートする“OpenGL multimonitor”も開発中。Linuxは、デスクトップパソコンにおいての普及が今一歩というところだ。LinuxのOpenGLのサポートにより、Linuxを搭載するデスクトップパソコンの増加に期待する」
講義はこのほかに、Windows NTワークステーションを利用した、リアルタイムのビデオ編集システムの紹介や、OpenGLのJavaバインディングに関する問題点の提示などの講義があった。OpenGLはUNIXから発生したものだが、今回の発表ではWindowsを利用したシステムが多いのが印象に残った。