日本ヒューレット・パッカード(株)は2月27日(現地時間)に米ヒューレット・パッカード社が発表したハードウェアを用いた暗号化技術『VerSecure(バーセキュア)』に関する技術説明会を開催した。
VerSecureは'97年11月に米ヒューレット・パッカード社が“International
Cryptography Framework(ICF)”という名称で発表した暗号化技術。暗号ではなく、国ごとに異なる暗号政策(ワセナー・アレンジメント)に合わせて、使用可能な暗号の種類や強さなどを設定できるという技術で、暗号ユニットとしてパソコンのPCIバス用ボードやネットワーク用のルーターなどに適用できる。
暗号の輸出・輸入は現在、各国でワセナー・アレンジメントにより規制されている。決められている暗号の鍵長やメソッドの種類が国ごとに異なるが、簡単に改ざんできないこと、不特定多数で使えないことがほとんどの国での共通の条件となっている。その点、ハードウェアの形で出荷するVerSecureは、改ざんしにくく、利用者も限定される。VerSecureは利用可能な暗号の強さを決める機能を持つため、ワセナー・アレンジメントに抵触しないよう設定することができる。犯罪捜査などで必要な場合に暗号鍵を政府などに引き渡す“キーエスクロー”システムや、2者間の暗号化された通信を第3者が解読できるようにするメカニズム“キーリカバリー”の設定は、オプションとして追加可能。
VerSecureを搭載したハードウェアの暗号化機能は単体では動作せず、ソフトウェアまたはICチップなどのハードウェアの形で供給される、“PAT(ポリシー活性化トークン)”と一緒に使用することではじめて暗号化機能を使用できる。PATはPAT発行のための民営組織SDA(Security
Domain Authority)より国別に発行され、有効期間や規制などの情報と、対応するハードウェアのシリアルナンバーが登録されている。ハードウェアとPATを組み合わせることで不正利用を防ぐという仕組みだ。現在イギリス、ドイツ、フランス、デンマーク、オーストラリアで輸出許可を得ている。日本での運用は未定。“CryptoAPI”をサポートしている。
米ヒューレット・パッカード社は、VerSecureをライセンス化して販売する予定。電子商取引などの情報通信分野での利用を見込んでいる。同社は将来的にLSIチップレベルまで小型化し、携帯電話やFAX機器などへの搭載を目指す。(報道局 市川美穂)
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