ウィキアではユーザーに関わっていく
「実は英語版ウィキアの最上位にランキングしているWikiは、もともと別のところでやっていたものなんですよ。『World of Warcraft』や『FINAL FANTASY XI』のWikiとか、スタートレックに関する『Memory Alpha』など、よそでやっていた人たちを呼び込んで、ウィキアの中でやってもらっています」
ウィキアへ移行してもらうことは、ユーザーにもメリットがある。自分が作ったWikiが検索エンジンの上位に表示されるようになるからだ。それにしても、ここまでスタッフがユーザーにコミットしていくことは、ほかのコミュニティーサービスでは珍しいだろう。
「実際、ほかのサービスではユーザーに関与することを極力避けている印象がありますね。しかし、ウィキアはどちらかといえばユーザーに積極的にコミットしていく立場です」
Wikiの執筆者を見つけ、そのコンテンツ構成の相談にも乗る。こうした作業はどこか雑誌や書籍の編集者に近いものを感じる。
「そうですね。私はライターさんと交渉する編集者に近いかもしれません。各プロジェクトが少年ジャンプの作家陣で、それに対して編集をやっていると言えば、イメージしやすいかも知れないです」
Wikiと言うと、どうしてもWikipediaのような辞書的な使い方が思い浮かぶが、実はもっと多くの可能性を持つツールだという。
「基本的にWikiって何もしないツールなんです。最初は何もないので、こういう方針でやりたいというのを許容できるのがWikiなんですよ。ブログだと日付データがあって、その中でしか機能しないじゃないですか。でもWikiは、ブログ風に日付で記事を並べることもできれば、ポータル的に記事を並べることもできる。『こういうやり方もある』を許容できるのがWikiのいいところです。逆に言うと、自分からそのやり方を考えていかなければ行けないわけですが」
もちろん、そのやり方を一緒に考えるというのも、コミュニティスタッフの仕事だ。
「たとえばWikiの各項目を日付順に並べてブログ風に使っている人がいますし、章立てという考え方ですと、MediaWiki(フリーのWikiソフト)の名前空間を使って、名前空間ごとにポータルサイトのように分けて使っている方がいます。そうすることで、1つのWikiが特定ジャンルのポータルとして機能してくる。英語版の『Animepedia』なんかがそういう使い方で、1つのWikiの中で複数のサブプロジェクトが平行して機能しています」