ネットスイートは、11月27日、東京都内で記者会見を開き、SaaSアプリケーションの開発・配布ツール「SuiteBundler」の提供を開始すると発表した。米国で10月に発表されていたもので、パートナーによるビジネス拡大を目指す同社にとって戦略的な新サービスとなる。
パートナーによるアプリ提供を促進する開発ツール
SaaS業界では、米セールスフォース・ドットコムが今年9月、「Force.com」と呼ばれるプラットフォームを発表しており、業務アプリケーションのオンデマンド提供から、パートナー企業を巻き込んだ広範なソリューションの一体提供へ向けた動きが加速している(関連記事)。こうした中、米ネットスイートが今年10月に発表したのが、アプリケーション開発ツール「SuiteBundler」である。
SuiteBundlerを使うと、SaaS型統合業務アプリケーション「NetSuite」上で連携して動作するカスタムアプリケーションを自由に開発・配布できるようになる。SuiteBundlerは、開発プラットフォーム「SuiteFlex」の1コンポーネントとの位置づけで、SuiteFlexを構成する「SuiteScript」「SuiteBuilder」「SuiteTalk」を使って作った機能から必要部分を切り出してとりまとめる。まとめたものは「SuiteBundle」と呼ばれ、ユーザーは任意のSuiteBundleをNetSuite上に追加して利用可能となる。
SuiteBundleに含められるのは、UIの設定やDBのカスタムフィールド、ビジネスプロセスのスクリプトなど。完成したSuiteBundleは、OSSとして同社のコミュニティで公開したり、パートナーであれば販売もできる。ただし、ネットスイートは課金機能を提供しないため、あくまでもパートナーが販売元となる再販モデルをとる。
SuiteBundlerの用途として想定されているのが、特定業務種向けのソリューションの提供である。NetSuiteはCRMに加えて、EコマースやERPの機能を持つ統合スイートだが、それを補うニッチなアプリケーションの開発が期待される。たとえば、会見中に行なわれたデモンストレーションでは、PC教室向けに作った予約管理システムを料理教室に流用するデモが披露された。
米ネットスイート ワールドワイドセールス&ディストリビューション担当プレジデントのディーン・マンスフィールド氏は、SuiteBundlerの提供について「さまざまな用途のアプリケーションをシームレスに使えるようになる。一度作ったカスタムアプリケーションを再利用すれば、コストの節約にもつながる」とアピール。また、「SuiteBundlerはシステムインテグレータから長年、望まれていたもので、米国では非常に受けがいい。インテグレータの収益性向上にもつながる」として、パートナーのメリットについても強調した。
ネットスイートの日本法人では、来年に予定される会計機能のローカライズと並行する形で、パートナーシップの構築に注力しており、年内に7社、来年には計14社とパートナー契約を結ぶ計画。代表取締役社長の松島 努氏は、「日本で展開するにあたって足りないものをパートナーとともに相互補完する形で提供していく。SuiteBundlerを使って、協業関係をさらに強固なものにしたい」と話した。
なお、ネットスイートは同日、多言語・他通貨・多税制に対応したグローバル企業向けのCRMサービス「NetSuite Global CRM」も発表した。