実はワタクシ、お掃除好きなんです
何で私がそこまでパックマンにはまって、いまでもやりたくなっているかというと、1980年に、ゲーセンにそれがやってきたときにすでに気づいていた。1つは、まず、
「お掃除好き」
である点。「ヘッドオン」に始まるといわれるドット・イート型ゲームの基本は、雑巾がけ感覚のキレイ好きである。それから、パックマンとモンスターのこのじゃれ合いって、それまでのTVゲームにはなかった。つまり、
「遊びそのもの」
という内容である。おそらく、これに匹敵する“遊びそのもの”の感覚は、「マリオブラザーズ」で、マリオとルイジが意味もなく空中でぶつかり合うようなじゃれ合いくらいしか、しばらくの間はなかったのだ。そして、最後にして最大の魅力が、
「ゲーム画面がパックマン宇宙のすべて」
であるという点である。
セカンドライフすら俗っぽく感じる箱庭的宇宙観
設定上、画面の外側に広大な宇宙とかうんざりするような日常社会とかそういうものは存在しない。あの箱庭的宇宙がすべてで、「ライフゲーム」にも似た抽象化されて単純化されたバーチャルワールドがそこにある。これに比べたら、“Second Life”(セカンドライフ)のバーチャル具合なんて、えらく俗っぽい感じさえしてくる。
さて、そういうわけでXbox 360の箱を広げて、マニュアルを見たり、サイトにアクセスしてたりしていたら。「なんだコレ?」 パックマン世界大会のパックマンというのが、私の知っているパックマンと、かなり違うのである(どんな感じか知りたい人は、 ASCII.JPの記事を参照のこと)。
なんとも、ミュータント的というべきか、その意味では大変に評価できるのだが、かなりというより、まるで別モノなのである。ここはやはり、私は、元祖オリジナルROMのパックマン(当時は、Pac-ManでなくPuck-Manだった)をやりたい。
『東京おとなクラブ』の原稿でも、パックマンを置いたゲーセンが減っているという話が出てくる。その後、パックマンは、下北沢でもプレイできなくなり、渋谷センター街の渋谷会館や新宿のミカドくらいでしかプレーできなくなった。そういえば、ミカドの場合は、パックマンと同じ岩谷徹氏デザインのリブルラブルがずっと置かれていたものである。
今回のご提案はこれ
ところで、先日、秋葉原のレトロゲームの専門店・スーパーポテト・秋葉原レトロ館の5階に、“スーパーポテトゲーセン”というのができていたのを思い出した。さっそく5階まで駆け上がって、「パックマンはないか? パックマンはないか?」などと、独りごとを言いながら店内をグルグルしたのだが……。ないのだ。パックマン。世界に誇る日本のテレビゲームの金字塔であるパックマンが、なぜないのだと思うのは私だけだろうか? そんなわけで、今回の“ご提案”だが、
スーパーポテトゲーセンは、「パックマン」を置いてほしい。
あと、個人的に希望したいのは『アミーゴ』『スペースインベーダー』『ルナランダー』『ディープスキャン』『Mr. DO!』『QIX』『ギャラガ』『ランパート』……とか、まだあるんですが。
え、そりゃ、業務用のテレビゲーム機本体を買ってこいって? セカンドライフの中で、レトロゼーセン作ってエミュレータを動かせって? 違うのだ。あの100円玉を投入して、ボコッとくる感覚が大切なのだと思う。いや、これはオヤジの戯れではなくて、まじめにテレビゲームは、文化そのものなのですよ。
筆者紹介−遠藤諭
(株)アスキー取締役。91年~2002年まで『月刊アスキー』編集長、現同誌編集主幹。日本のモバイルやネットのこれからについて、業界での長い経験を生かした独自のスタンスで発信している。著書に、日本のコンピュータ黎明期に活躍した人たちを取材した『新装版 計算機屋かく戦えり』、朝日新聞に連載した『遠藤諭の電脳術』など。ブログ“東京カレー日記”も更新中。
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