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「ブレードPC」のマーケットを創設したクリアキューブ社の新CEOに聞く、日本市場への取り組み

2007年02月23日 22時07分更新

文● アスキービジネス編集部

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ClearCube(クリアキューブ)は、クライアント向けの「ブレードPC」市場を創設したベンダーであり、日本国内でもさまざまな分野の顧客企業を持っている。2006年、同社はIBM、Chipcomなどの経歴を持つブルース・コーエン氏を新たに社長兼CEO(最高経営責任者)に任命した。今回、来日したコーエン氏にインタビューする機会を得た。同社が日本に注目する理由、今後の戦略などについて伺った。

日本市場を重視するクリアキューブの戦略

――まずは昨年CEOに就任されてから、注力されている点をお聞かせください。

コーエン氏:現在は以下の3つの点に集中しています。1つめがハードウェアベンダーからソリューションベンダーへの移行、2つめが各国での販売チャネルの確立、そして3つめが国際的なビジネスの拡大です。3つめの国際的なビジネスの拡大については、日本が重要な役割を占めていると考えています。

米クリアキューブ社長兼CEO ブルース・コーエン氏

米クリアキューブ社長兼CEO ブルース・コーエン氏

――クリアキューブが日本市場を重要だと考えている点について もう少し詳しくお聞かせください。

コーエン氏:理由は3つあります。まず、我が社はすでに日本でビジネスを展開しているということです。顧客企業は約30社ありますし、昨年には日本法人も設立しています。また日本法人で働く社員に対して、今後の事業拡大を約束するとともに、私自身が日本を訪れることで、日本を重視していることを体現したいとも考えました。

 2つめは、日本国内のソリューションパートナー企業様の経営者たちとお話をすることで、クリアキューブが日本市場を重要視している点を印象付けたいという点です。そして3つめですが、世界でも品質への要求レベルが最も厳しい日本市場で成功することで、クリアキューブが高品質の製品・サービスを提供できるということを世界に示したいと考えたからです。

 具体的な数値目標を挙げましょう。2007年には米国以外での売り上げが約20%となる予定です。この比率を2008年に30%、2009年に40%、そして2010年には50%と上げていきたいと考えています。会社全体の売り上げは年率40%程度の成長率を見込んでいますので、米国外での売り上げの伸びは、それ以上にする必要があります。日本国内の売り上げは2007年には全社の売り上げに対して約5%となる見込みですが、2008年には10%まで上げたいと考えています。実現には大変な努力が必要ですが、私が各国を訪れることで米国外のビジネスが重要であることを身をもって示し、達成したいと思います。そうすれば、エアラインのマイルも貯まりますからね(笑)。

――日本国内での高い成長率を目指しているわけですが、それを実現するために主にどのような業種や規模の企業をターゲットとしていくのかお聞かせください。

コーエン氏:規模で言えば、中規模(社員数300~400人程度)から大企業が主なターゲットとなります。また業種では、これまでは金融、病院、そして政府機関などのセキュリティの確保が必要な分野に多くの顧客を抱えています。そして最近では新たに、オフショアリングで海外での開発を行なうIT企業からの需要も増えています。これらの会社は海外の安価な労働力を活用しつつ、知的財産の保護を必要としているのです。

 日本国内に限って言えば、他国と同様の「プライバシーの保護」、「セキュリティの確保」のほかに、「スペースの有効活用」という点で我が社のソリューションを選んでいただけるのではないかと考えています。

――それでは、クリアキューブの製品・サービスを導入した場合のメリットをエンドユーザー、管理者それぞれの面から教えてください。

コーエン氏:エンドユーザーにとってのメリットは「何も変わらない」ということです。机の上や下にコンピュータがあった頃と同じように使えます。また、使っているブレードPCが故障しても、他のものに簡単に切り替えることができます。

 管理部門にとっての利点は、まずセキュリティ、そしてTCO(Total Cost of Ownership:コンピュータの導入・維持・管理の費用の総額)の削減です。後者についての具体的な例を挙げましょう。世界中で合計150万台のPCを管理している企業の管理者と話をしたのですが、一般的なPCの場合、1人の管理者は300台のPCを担当し、マシントラブルが起きた際には、翌日末までに修理もしくは置き換えをするという契約で仕事をしていたそうです。我が社の製品を説明したところ、管理者が管理できるマシンの台数は1人あたり1200台に増加し、トラブル時の復旧はわずか1時間で済むという結論に達していただけました。企業の規模に関わらず、コスト削減効果は大きいと思います。またハードウェア価格の低下に加え、仮想化の導入が進むにつれて、さらにこの効果は大きくなるでしょう。

――ブレードPCへの仮想化の導入について、もう少し詳しくお願いします。

コーエン氏:仮想化の導入により、1台のブレードPCを複数のユーザーが同時に利用できるようになります。もう少し詳しく説明しましょう。我々はユーザーを「パワーユーザー」、「ナレッジワーカー」、「タスクワーカー」の3つのパターンに分類しております。パワーユーザーは金融分野のトレーダーのように高負荷の作業を行ないますので、通常は仮想化を用いずに1台のブレードPCを1人が占有して使います。

 ナレッジワーカーとは我々のようにマイクロソフトオフィスのワード、エクセル、パワーポイントを主に使うユーザーのことで、4~5人で1台のブレードPCを共有することができます。そしてタスクワーカーとは、たとえばコールセンターのオペレーターのようにシンプルなアプリケーションを利用するユーザーで、12~20人で1台のブレードPCを共有することができます。

――ブレードPC市場での競合他社に対して、クリアキューブが持つ強み、差別化のポイントを教えてください。

コーエン氏:現在、競合として挙げられるのはヒューレット・パッカードですが、今後他にも数社が参入するでしょう。現在の競合であるHPは、先ほど分類したパワーユーザー、ナレッジワーカー、タスクワーカーそれぞれの需要に対して、個別のソリューションを提供できるでしょう。しかし我々は1つのラック、1つのシャーシですべてのユーザーの需要を満たすことができます。

 また差別化というのは、製品だけでなく、ビジネスのやり方でも作ることができます。我々は多くのパートナーと良い関係を保っており、その点でもうまくやれていると思います。

 そして技術的な点ですが、最初に申し上げたとおり、我々はハードウェアベンダーからソリューションベンダーへの移行を進めていますが、そこで重要なのがソフトウェアです。我々のブレードPC用の管理ツール「Sentral」は、多くのブレードを1つのコンソールで管理できるとても洗練されたソリューションです。

――今後はWindows Vistaのようなリッチなビジュアルを持ったOSやアプリケーションが増えていくと思われますが、ブレードPCはこのようなソフトウェアに対応可能でしょうか。

コーエン氏:ハードウェア価格が低下したことで、我々のハードウェアには十分に高速なプロセッサーと大量のメモリーを搭載できるようになりました。新しいソフトウェアやOSにも問題なく対応できます。

――最後に国内でのチャネルの確立について、方針をお聞かせください。

コーエン氏:我々は現在、日立システムアンドサービス、NTTPCコミュニケーションズという強力なチャネルパートナー2社を有しています。チャネルの拡張を目指していきますが、彼らのビジネスとの競合が起きないように慎重に進めていきます。

――本日は、どうもありがとうございました。

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