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米国IT事情を探る 第2回

待ちに待ったVista発売の様子

2007年02月05日 20時00分更新

文● 遠竹智寿子 (写真提供:週刊アスキー)

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Vistaロゴ(スクエア)

 「パソコン市場を活性化させたい」と願う業界関係者が、待ちに待った『Windows Vista』の発売。

 全世界に先駆けて、有楽町やアキバで行われた“カウントダウン”イベントの様子は、他国のメディアでも紹介されていた。それでは、本国・米国でのラウンチの様子はどうだろうか? 「ユーザーの評判は?」「 ゲイツ氏はあのアップルのCMをどう思っているの?」といった話題を米国メディアから取り上げる。



いつも以上に興奮気味のバルマー氏


 米国でのラウンチイベントは、ニューヨーク市内で2日間に渡り開催された。パートナー企業やテスト版/ベータ版のモニターたち、アナリストやジャーナリストも一同に会した。

 マンハッタンで人気の倉庫街のあちらこちらのレストランを使ってパーティーやミニイベントが行なわれた。ノキアシアター(タイムズスクエア)では、豪華な食事がふるまわれ、バンドも入ったアメリカらしい雰囲気の中で大々的にVistaがアナウンスされた。

 ビルディング一面に掲げられたVista模様のフラッグの上を赤、青、黄、緑とVistaとOfficeのロゴカラーの全身タイツを見につけたパフォーマーたちが、ビルの壁伝いに舞うといった奇抜なパフォーマンスを見たときはちょっとびっくり!(逆さで宙ぶらりんにされている様子は、見ているほうが怖い……)。

 シアター内のキックオフでは、デル、インテル、東芝、ヒューレット・パッカードらの幹部たちと一緒に壇上に立ったスティーブ・バルマー氏が「マイクロソフトの歴史の中で最大のラウンチだ」と(いつもよりもさらに)興奮気味に盛り上がる。一方、アナウンス・イベントで、ビル・ゲイツ氏がいつもどおりの姿(ノーネクタイのシャツに丸首セーターを合わせたスタイル)で、穏やかに力強くスピーチする様子がなんとも対照的でおもしろい。

米国IT事情

ノーネクタイのビル・ゲイツ氏(左)と興奮気味のスティーブ・バルマー氏(右)



行列はできたが、混乱はなし


 ニューヨークやサンフランシスコなどメジャーな都市の“BESTBUY”や“CompUSA”といったパソコンショップは、カウントダウンのために深夜2時までオープン。『プレイステーション 3』や『Wii』の発売時には、テントを張っての待機組みが出て、当日はウォールマートなどで乱闘騒ぎもあったほどだっただが、Vistaでは混乱するほどの詰め寄りというのはなかったようだ。

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大手量販店のひとつ“BESTBUY”

 それでも、500~1000人規模での行列はできていたようだ。英語版のパッケージにはビル・ゲイツのサイン入りエディションが用意されているので、マニアには手に入れたい一品だったのかも知れない。サンフランシスコのBESTBUY前には、手にしたモバイルのスクリーンに“Vista=アップルソース”のビジュアルを映し出して歩き回るアップルファン(?)も登場。それなりに各所では盛り上がったようだ。



やはり出る“VistaはMacに似ている”という議論


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アンチもやはりいる

 また、発売当日は、ビル・ゲイツ氏が積極的にメディア取材を受け、各局から繰り返し聞かれる同じ(時にはシニカルな)質問に嫌な顔せず応えていた。

 そのひとつ、CNNのインタビューでは「人々の日常において、テレビを見るよりもウィンドウズPCを使うことの方が多くなってきている。そして、その使われ方は、フォト、ムービー、コミュニケーティングと幅広い。そんな中で利用者の利便性を高める新しいアプリケーションが必要となっている。それがVistaだ」と語った。

 「60億円をかけて開発したって本当?」「Macを真似ている?」「革命的なオペレーテイングだとしても、今すぐ慌ててアップグレードする必要はないんじゃないの?」といった質問にも躊躇せず答えた。特に“Mac似”という表現には「NO、NO、NO、NO、NO……」と過敏反応。

 他の雑誌の取材でもそうだったのだが、この手の質問にはきっぱりと否定を入れ、MediaCenterやタブレットなど独自の機能を強調。また写真や動画アレンジの機能についてはVistaの優位性を訴えた。ガジェットなどのインターフェースについても、リリースがこの時期になっただけで、アップルが出したものを真似て開発したわけではないことを強調していた。



中国でOEM版Vistaが安い理由


 マイクロソフトは、Vistaをコンシューマーユーザーに「より優しく、よりセキュアーにし、よりエンターテイメントとコネクティングを視野に入れた」と紹介するが、言葉ではいまひとつその優位性が伝わらないと言った反応がある。

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タブレット標準対応もVistaの特徴のひとつ

 ゲイツ氏もあちらちこちらで「とにかく数分間触ってみれば WOW(すごい)!となるはずだ」とアピール。実際どうやって体感してもらうかが、XPユーザーへのキーとなる。担当バイスプレジデントがテレビ番組に登場し、デモを披露するなど積極的な試みを見せる。

 米国のキャスターは、よく自分自身のインプレッションや好みをちらっと漏らすのだが、Vistaについては「カッコイイ」といった好意的なコメントが多い。発表後の彼らのディスカッションのひとつが「どのエディションを選ぶべきか」「いつ手に入れるべきか」だ。

 Home BasicとHome Premiumの違いや、ハードによっては一部機能が使えないといった話を加えながら「Vistaはとってもクールで手に入れるべきだとは思うけれど、今のマシンをアップグレードするよりもインストールされたPCを購入するのがオススメ。今のXPマシンに満足しているなら、しばらく様子を見てからがいいと思うよ」とコメントしていたのはCNET TVである。

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中国の有力オークションサイト淘宝網(Taobao.com)にも、すでに多くのVista関連製品が出品されている

 そのほかに印象的だったのは、CNN香港が紹介していた、本物よりも先にラウンチしていた“Windows Vista海賊版”の話。そんなこともあってか、中国のOEM版はかなりの低価格と聞く。恐るべし……。



Vistaへのアップグレードは大手術?


 最後に、現時点(2月4日時点)で最も興味深かったゲイツ氏のインタビュー記事を紹介する。NewsWeekマガジンのスティーブン・レヴィー記者が、アップルのコマーシャルの感想を尋ねている。

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Vistaは成功するか?

 米国版のMacintoshのCMで、PCガイを演じるのは、コメンテーターやユーモア系作家として知られるジョン・ホッヂマン氏。Vistaのアップデートを“手術”と表現し、手術を受ける前のナーバスなPCガイを演じる。ゲイツ氏は、このCMを一度も見たことがないと突き放す。そして「Windowsユーザーの多くは、それを見てバカにされたと感じるのではないだろうか」とし、「(CMが私にどう影響するかではなく)、最終判断はカスタマーが決めることだ」と強気の姿勢を見せた。

 とはいえ、アップルの話が出るとつい反応してしまっているところを見ると、やはりCMがお気に召さないのだろう。

筆者紹介-遠竹智寿子

 外資系コンピュータメーカーのマーケティング部、広報部の勤務経験を経てフリーランスとして独立。ITジャーナリストとして調査、記事執筆を手掛ける一方で、企業向けコンテンツ企画やマーケティング調査などを手がける。 また、コミュニケーションスキルやIT・英語教育分野における研究、事業活動も行っている。現在、 月刊asciiに『マインドマップ「超」仕事術]『深化するCSR』を、アスキービジネスに『ビジネスマインドエッセンス』を連載中。


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