Fate8割増! コミックマーケット93の二次創作人気を調査

文●myrmecoleon 編集●村山剛史/アスキー編集部

2017年12月21日 17時00分

恒例コミックマーケットの二次創作動向とサークル数増減予想は驚きの結果に。2017年の冬コミもFateシリーズが大幅増、一気にトップへと躍り出ました

コミックマーケット93は12月29日から31日の3日間開催
過去10年で最小規模

 今年も2017年12月29日(金)から31日(日)にかけて、東京お台場の東京ビッグサイトにおいて同人誌即売会「コミックマーケット93」が開催されます。

 近年は会場工事によりサークル参加規模が流動的ですが、今回は久々に前回とほぼ同規模の約3万2200サークルが参加。若干減ったこともあり今回も過去10年で最小規模のコミックマーケットとなりました。

 第二期第20回ではコミックマーケット92に関しての記事を書きました。今回はコミックマーケット93のサークル数の動向と、人気作品のpixivでの動きをみていきます。

 これまでの回でも説明した通り、コミックマーケットではジャンルコードという仕組みがあり、これを目安にどういった分野のサークルがどれくらい参加しているかを調べることができます。今回の参加サークルの比率はグラフ1の通り。

 今回も大きくは変わりませんが、前回に引き続きギャルゲー・評論・アニメが増加、代わってゲーム・同人ソフト・マンガFCが減っています。

公開されているコミックマーケットWebカタログ・DVDカタログのジャンルコード情報を参考に、いくつかに区分けしたコミックマーケット93のサークル数の比率

 この連載ではコミケの6~7割を占める二次創作サークルについて注目し、作品ごとのサークル数をカウントしています。数え方については以前の記事で細かく説明しましたのでそちらをご確認ください(第1期第39回の囲みコラム「サークルの数え方」参照)。

 今回のコミックマーケット93のサークル参加申し込みは、郵送が8月8日から8月16日、オンラインが8月8日から21日まででした。このため今回のデータは“2017年8月にコミックマーケット93に申し込んだ同人サークルがどのような作品に関する同人作品の頒布を予定していたか”が反映されている数字となります。

 現在のものではありませんし、あくまでコミックマーケット内での参加の規模を見ているものです。コミックマーケットは比較的参加者の年代が高いこと、関東圏の参加者の割合が多いこと、海外のサークルは参加しにくいことなどの偏りがあり、同人サークル全体の傾向を示すものでもありません。

 上記のような事情もありますが、コミックマーケットは最大の同人誌即売会であることから、一定の参考になると評価してご紹介しています。これらをふまえてご覧ください。

予想がほぼ的中 Fate・アイマス・けものフレンズが拡大

 上記の方法で調べたコミックマーケット93で多かった作品はグラフ2の通りです。参考にコミックマーケット92での数も載せています。なお「ヘタリア」「僕のヒーローアカデミア」「ワールドトリガー」は上位ではありませんが前回予想したため参考に載せています。

 トップは予想以上の拡大となった「Fateシリーズ」。以下「艦隊これくしょん」「アイドルマスター」「東方Project」「刀剣乱舞」「ラブライブ!」などのサークルが多いです。特にFate・アイマスの拡大が目立ちます。

コミックマーケット93のWeb・冊子・DVD-ROMの各カタログを参考に、各作品の二次創作サークルの数を概算したもの。調査方法は第1期第39回の囲みコラム参照。正確な数字は求めるのが困難のため参考程度に。グラフが青いのは男性サークル寄り、赤いのは女性サークル寄りの作品。中間程度のタイトルは紫とした。また参考に前回のサークル数を灰色で示している

 前回の予想と結果をまとめると下記の通り。全体としては20作品中19作品的中。外れた「ガールズ&パンツァー」も僅差のため、ほぼ全て的中と言っていいでしょう。

 「ガールズ&パンツァー」は5%弱増しの微増。劇場版の最終章が12月より公開しており現在も好評です。次回コミックマーケット94からジャンルコードの独立が決まりました。

 なお、的中はしましたが「Fateシリーズ」「アイドルマスター」「VOCALOID」は推定以上の増加。「けものフレンズ」は見込みを下回りました。また「艦隊これくしょん」「進撃の巨人」「あんさんぶるスターズ!」「弱虫ペダル」「ワールドトリガー」は推定以上に減少。「ハイキュー!!」「TIGER&BUNNY」「黒子のバスケ」は想定よりは減少幅が小さかったです。サークル数まで推定するにはまだまだ課題があるようです。

コミケ92→93でのサークル数変化予想結果

大きく伸びたのは「Fateシリーズ」と「アイドルマスター」

 Fateはスマホゲーム「Fate/Grand Order」が劇的なヒット、アニメ「Fate/Apocrypha」も好評により、今回も8割増しの大幅増となりました。女性人気では今回目立ったタイトルはありませんが、Fateは女性人気も高いタイトルです。

 「アイドルマスター」は今回の増加で過去最大規模に。「ミリオンライブ! シアターデイズ」の開始やシンデレラガールズ劇場のアニメ化などいくつかの要素が重なった結果かと思われます。

 「けものフレンズ」は想定よりは低めですが大幅の増加。次回も期待されます。

 ほか「VOCALOID」「僕のヒーローアカデミア」「ガールズ&パンツァー」「おそ松さん」が増加。その他のタイトルは減少傾向で、代わって圏外の「名探偵コナン」(赤井と安室のカップリングがヒットして近年再拡大)が上昇してきています。

男性向サークル数もFateがトップに

 グラフ3では、作品が該当するジャンルコードと、その他のジャンルコードで分けたサークル数をグラフにしてみました。

 ジャンルコード「男性向」でも「Fateシリーズ」がトップに。男性向は倍以上の拡大となりました。次いで減少しましたがまだ強い「艦隊これくしょん」、前回並みの「アイドルマスター」と並びます。「ガールズ&パンツァー」と「グランブルーファンタジー」もまだ多いですがだいぶ減少しています。次点はサンシャインで増加した「ラブライブ!」。「けものフレンズ」はだいぶ増えましたが男性向は少ないようです。

 なお「東方Project」で同様の傾向(男性向)のサークルは、これまでも紹介している通りジャンルコード「東方Project」内で主に申し込まれ、こちらは少ないです。

 作品サークル中の「男性向」ジャンルコードの比率ではFateが大きく上昇。男性向人気がはっきり流れてきています。艦これ・アイマス・ガルパン・グラブルは低下。ラブライブが上昇しています。

 ジャンルコード全体の動きとしては今回もFate人気で「TYPE-MOON」が前回比1.6倍・前年比3倍の拡大。「アイドルマスター」も1.2倍に拡大しています。

 ほか「FINAL FANTASY XV」が好評の「スクウェア・エニックス(RPG)」、けもフレ・ガルパン人気の「アニメ(その他)」、アニメ放送中の「血界戦線」なども増加しています。

 「FC(ジャンプその他)」など週刊少年ジャンプ関連は今回も低下。ほか今回「弱虫ペダル」「ゲーム(RPG)」「ダイヤのA」「進撃の巨人」「あんさんぶるスターズ!」などが減少しています。前回100サークルを切った「ダイヤのA」は次回から「FC(少年)」に統合されることになりました。

 ジャンルコード別のサークル数の細かい数字はブログにてすでに公開していますのでそちらをご参照ください。

グラフ2と同様、各作品のサークル数を、申込みジャンルコードについて通常誘導される該当ジャンルコード、男性向、それ以外(コスプレ等)で分けた積み上げグラフ。「Fateシリーズ」「艦隊これくしょん」「アイドルマスター」「ガールズ&パンツァー」「グランブルーファンタジー」「ラブライブ!」「けものフレンズ」で男性向での参加が多い

次回C94のサークル数増減を予想! 今回8割増だったFateですが、まだ伸びるようです

次回予想:まだ拡大する「Fate」、まだ伸びるか「けものフレンズ」
「宝石の国」「アズールレーン」も増加の見込み

 今回もpixivのイラスト投稿数を参考に次回サークル数の増減を予想してみます。前ページの通り、前回予想した20作品中19作品が的中しました。今回も前回と同じく、次回コミックマーケット94のサークル数の増減を予想していきます。

 なお、サークル数増減の予想は、コミケ申し込み前のpixivの各作品の投稿数、pixiv投稿者中の海外投稿者の推定比率、中高生の推定比率、コミケ参加サークルのpixiv使用率、過去の予想結果などを参考としています。

 今回は2017年11月1日から12月18日までのpixiv投稿イラストのデータを使用しました。グラフ4では、この期間のpixivのイラスト投稿数を海外・中高生投稿者の比率で補正したものとコミックマーケット93のサークル数を比較しています。次回増加が見込まれるタイトルとしてアニメヒット中の「宝石の国」、急激に話題となった中国発ソシャゲ「アズールレーン」も載せてみました。

 次回コミックマーケット94の申込みは2018年1月から2月ですので、今期アニメの評価やコミックマーケット93開催中の発表などにも左右されますが、おおまかな傾向はつかめると思われます。

 今回の予想としては以下のような感じでしょうか。なおここでは前回比で5%に満たないような小規模な増減を微増または微減と表現しています。また、広めのレンジですが次回のサークル数も予想してみました。

 コミックマーケット94は久々に全館が使用できるようになりますので、予想サークル数は過去最大だったコミックマーケット91と同規模の場合として計算しています。あくまでご参考までに。

コミケ93→94でのサークル数変化予想

 増加が見込まれるのは今回も「Fateシリーズ」。FGO人気に加えて、来年にはテレビアニメ「Fate/EXTRA Last Encore」が放送されます。2017年11月~12月のpixivではイラスト2万件を超えてトップ。会場の都合もあり今後は劇的な増加はないでしょうが、作品のサークル数トップは間違いないと思われます。

 「けものフレンズ」は若干投稿が落ち着いたものの現在も好調。作品人気としては長いものになりそうです。次回も増加が見込まれます。

 アニメでブレイクした「宝石の国」は今回2サークルほどでしたがpixivでは大変勢いがあり、大幅な増加が予想されます。ただし海外人気が強いため、次回コミケでは100サークル前後の参加見込みでしょうか。

 各国の戦艦をモデルにしたキャラクターが登場する中国産ソーシャルゲーム「アズールレーン」は日本での開始が前回申込み後のため、次回が初のコミケ申込みとなります。いまのところ未知数のため広めに予想していますが、投稿規模としては500サークル前後の参加が見込まれるレベルです。

 ほかテレビアニメ放送中の「ラブライブ!」「おそ松さん」、初音ミク10周年の影響か勢いのある「VOCALOID」なども増加が予想されます。

 なお、こちらの推定は全体の比率に対して行なっているものです。現在東京ビッグサイトの拡張工事の関連により全体のサークル数が増減しており、影響する可能性があります。ご了承ください。次回は久々にビッグサイト全館が使用できるとのことですので、上記の通り参加サークル数が増加する見込みです。

コミックマーケット93のサークル数と、pixivに2017年11月1日~12月18日に投稿されたイラストについて作品ごとにタグを名寄せして作品数をカウントしたものを海外投稿者・国内学生投稿者の比率で補正したもの。透過している緑の棒グラフがpixivの補正済み投稿数。pixivの投稿数は左軸、コミケのサークル数は右軸。左右の軸はおおむね両値の比の平均に近くなるように調整している

 過去の調査で、近い時期のpixivの投稿数から次回の各作品のコミケ申込み規模が推定できることがわかり、今回9割以上の精度でサークル数の増減を予想できました。今回は新たなチャレンジとして次回の参加サークル数そのものの予想も公開してみました。それほど当たらないとは思いますが、結果をふまえて参考としたいと思います。

イベント告知

 冬コミ・コミックマーケット93に出展します。3日目・31日日曜日 東6ホール ナ-13bでお待ちしています。ニコニコ統計データハンドブックの新作を出す予定。お楽しみに。既刊はCOMIC ZINに委託中

筆者紹介:myrmecoleon

 趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。コミケ・ニコニコ動画・pixiv・deviantARTなどの調査を行ない、『ニコニコ統計データハンドブック2017』など同人誌としてコミケで頒布。2014年に自身の企画で「次元の壁をこえて 初音ミク実体化への情熱 展」を開催。元明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β実行委員。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった著作に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)など。画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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