このページの本文へ

小惑星「リュウグウ」試料に新たな磁気記録媒体、北大などが発見

2024年05月08日 06時33分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

北海道大学、神戸大学、東北大学などの共同研究チームは、探査機「はやぶさ2」が回収した小惑星「リュウグウ」の最表面に存在していた砂粒の磁場の可視化に成功。宇宙塵の高速衝突で形成した擬似マグネタイトと多量の鉄ナノ粒子からなる新組織を発見した。

北海道大学、神戸大学、東北大学などの共同研究チームは、探査機「はやぶさ2」が回収した小惑星「リュウグウ」の最表面に存在していた砂粒の磁場の可視化に成功。宇宙塵の高速衝突で形成した擬似マグネタイトと多量の鉄ナノ粒子からなる新組織を発見した。 研究チームは今回、はやぶさ2が小惑星リュウグウから回収した試料(砂粒)の表面を、電子線ホログラフィーと呼ばれるナノスケールの磁場を可視化できる電子顕微鏡を用いた手法で調査した。その結果、磁鉄鉱(マグネタイト:Fe3O4)粒子が還元して非磁性になった木いちご状の擬似マグネタイトと、それを取り囲むように点在する渦状の磁区構造を持った多数の鉄ナノ粒子からなる新しい組織を発見した。 同チームはさらに、このような組織が形成するための条件について、数値衝突シミュレーションにより計算した。すると、星雲磁場が消滅した後の時代に、直径2~20マイクロメートル(1マイクロメートルは10-6メートル)の非常に小さい宇宙塵が秒速5キロメートル以上の速度でリュウグウの母天体に衝突することで形成されることが判明。これにより、小惑星内部での水質変質が終った後の時代における新しい組織であると結論付けた。 磁性鉱物は、初期太陽系の環境情報を記録できる天然の磁気記録媒体と言える。これまで知られていた記録媒体は小惑星内で水質変質時に形成するマグネタイトや磁硫鉄鉱にほぼ限られていた。今回発見した多数の鉄ナノ粒子は、水質変質後の時代における初期太陽系内の磁場情報を記録している可能性があり、初期太陽系のより幅広い磁場環境の理解につながることが期待される。 研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌に2024年4月29日付けで掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ