新しい入力デバイスが登場
これに続くのがマウスの普及である。DOS環境であっても、Digital ResearchのGEMとかQuarterDeckのDESKviewなど、マウスを利用できる(というかマウスを前提にした)環境が出てき始めた。
またアプリケーションの中には、独自にマウスをサポートしたものもあった。これに関しては間違いなくApple ComputerのMacintosh(*1)が先駆者であり、もちろんその先祖はXEROXのAltoであるのだが、当時Altoの存在を知っていたユーザーなどほんの一握りであり、大多数のユーザーはMacintoshでGUIというものと、そこで使われるマウスという新しいツールを知ったとしてしまっても過言ではないと思う。
PCにおけるマウスの需要に対応すべく、MicrosoftはMicrosoft Mouseを1983年に発売する。当初発売されたのはRS-232-Cポートに接続するタイプで、シリアルマウスと呼ばれた。
画像の出典はWikipedia
これに引き続きMicrosoftは1986年頃に、Microsoft InPortなるI/Fカードとセットになったマウスも発売する。
画像の出典はWikipedia
シリアルマウスとの対比でこちらはバスマウスと呼ばれたが、バスマウスといっても実際にはマウスからポジションをシリアル通信で送っているので、本質的にはシリアルマウスと差がない。
違いは? というと、シリアルマウスの方は1本のシリアルで、マウスのX座標とY座標、それとボタンを押す/押さないの情報を順次送っていたのに対し、バスマウスはX座標用とY座標用、それとボタン1~3それぞれが別の配線になっており、全部の配線で並行して情報をシリアルで送っていたことだ。そのため、5chのシリアル通信を一気に処理できる専用チップがInPortのI/Fカードの上に載っている。
原理的には、シリアルマウスよりバスマウスの方が、より高頻度に位置情報やボタン情報を送れる分、反応が早いはずではあるのだが、まだゲームなどにマウスを活用する時代ではなかったので、現実問題として使い勝手にまったく差はなかった。
一部のビデオカードの中にはこのバスマウス用のI/Fを搭載したもの(例えば1989年に発表されたATIのVGA WONDER 1024 XL)も存在する。ただこうしたマウスの需要は、意外にPC互換機では立ち上がらなかった。
Windowsを使うには必須と言われても、Windows 1.0や2.0あたりは使い物にならないというのが正直なところで、どちらかといえばOS/2 2.0の方がまだマシ(ただしインストールが地獄)という感じだった。実際筆者もAT互換機で本格的にマウスを使うようになったのは1990年以降だと記憶している。
(*1) これもApple ComputerのLisaが先駆者というか、Alto→Lisa→Macintoshなのだが、Lisaも一部のマニアのみが知る機種であり、Altoとどっちが一般的なユーザー(≠Macintoshユーザー)にとって知名度が高かったか、よくわからない。
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