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京大など、ナノスケールの永久ループ電流の機構を解明

2023年12月26日 06時13分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学、名古屋大学の共同研究チームは、「カゴメ格子構造」の金属化合物で創発する新奇な相転移である、ナノスケールのループ電流秩序を解明する理論を発見した。ループ電流秩序は“磁場を必要としないホール効果”や“軌道強磁性”を伴い、微小な外部磁場や一軸歪で制御可能であるため、この外場に対する敏感性を応用したデバイスの開発につながる可能性がある。

京都大学、名古屋大学の共同研究チームは、「カゴメ格子構造」の金属化合物で創発する新奇な相転移である、ナノスケールのループ電流秩序を解明する理論を発見した。ループ電流秩序は“磁場を必要としないホール効果”や“軌道強磁性”を伴い、微小な外部磁場や一軸歪で制御可能であるため、この外場に対する敏感性を応用したデバイスの開発につながる可能性がある。 2019年に発見されたカゴメ格子金属AV3Sb5(A=Cs、Rb、K)は幾何学的フラストレーションを有する新種の超伝導体であり、多彩な電子状態が実現することで知られている。(幾何学的フラストレーションとは、正三角形の3つの頂点に電子スピンに配置すると必ず1組が平行になってしまう状態を指す。)中でも「ループ電流秩序」は、ナノスケールの電流が減衰せず流れ続ける、極めて不思議な電子状態であり、世界的に注目されているが、その仕組みは解明されていなかった。 研究チームは今回、カゴメ金属のループ電流秩序の理論機構を、場の量子論に基づき解明した。同チームは、フラストレーションにより増大した電子の量子揺らぎ(不確定性原理に基づく電子の運動)が糊となり、電子と正孔(電子の空孔)が特殊な束縛状態を組むことを発見。この束縛状態の振幅は虚数となり、自由電子への有効磁場を与えるため、永久ループ電流が流れることを明らかにした。 研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年11月29日付けで掲載された

(中條)

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