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オフターゲットの少ないゲノム編集技術、阪大など開発

2023年09月27日 06時41分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学、名古屋大学、環境医学研究所などの共同研究チームは、目的とする遺伝子以外の変異(「オフターゲット効果」と呼ばれる)の発生率を極めて低く抑えた新しい遺伝子修正法「NICER」法を開発した。ゲノム編集法として広く知られる「クリスパー(CRISPR)」はオフターゲット効果の発生が多く、ゲノム編集を医療応用する際の懸念となっている。目的外の変異の発生を抑えられるNICER法により、遺伝性疾患治療の新しい展望が開かれる可能性がある。

大阪大学、名古屋大学、環境医学研究所などの共同研究チームは、目的とする遺伝子以外の変異(「オフターゲット効果」と呼ばれる)の発生率を極めて低く抑えた新しい遺伝子修正法「NICER」法を開発した。ゲノム編集法として広く知られる「クリスパー(CRISPR)」はオフターゲット効果の発生が多く、ゲノム編集を医療応用する際の懸念となっている。目的外の変異の発生を抑えられるNICER法により、遺伝性疾患治療の新しい展望が開かれる可能性がある。 研究グループは、ゲノム編集時に発生するオフターゲット効果の問題を解決するため、二つの新しいアプローチをとった。まず、DNAの2本鎖切断が変異の主要な原因となることに注目。DNA鎖を2本とも切断する代わりに1本の鎖だけを切断することで、変異のリスクを低減させた。さらに、外来性DNAドナーを使用せず、ヒトが元々持っている染色体をドナーとして利用することで、外来性DNAが予期せずゲノムに組み込まれないようにした。 同チームはまた、相同染色体(父方および母方から由来した形態の相等しい一対の染色体)に一つあるいは二つずつ、DNA1本鎖切断を追加で発生させる工夫をして、遺伝子修正効率を大幅に高めることにも成功。実験により、数塩基対以内の小さな遺伝子変異だけでなく、数百塩基対に及ぶ比較的大きな遺伝子変異も修正可能であることを確認し、ファンコニー貧血などの遺伝子疾患を起こす変異も修正できた。 研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に、2023年9月15日付けで公開された

(中條)

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