年収3900万円のうち1670万円が税金に
たとえば、行列のできるクリニックの院長先生が年収3900万円を稼ぐとどうなるのだろう? 煩雑になるため「扶養控除」や「社会保険控除」などの所得控除は考えないで大雑把な計算をした場合、以下のようになるという。
(3900万円×0.4)-279万6000円=1280万4000円の所得税がかかる。住民税は10%だから、390万円である。合計で1670万4000円が税金としてかかってくる。このほかに所得に応じて事業税というのがあり、数十万円収めることになる。当然、社会保険料も支払う。(139〜140ページより)
3900万円の収入を得たとしても、手元に残るのは約2230万円。それでも十分に高額ではあるが、半分近くが税金で持っていかれてしまうのだから、「目の前をお金が素通りしていくようなもの」という印象を抱いたとしても無理はない。
なお2020年は、新型コロナのパンデミックで患者数が大きく減ったそうだ。
診療控えと感染防止策の徹底で感染症が激減したからだ。100年に一度の感染症爆発など予測がつくわけがない。このとき、ぼくの年収は前年の61%に落ち込んだ。この先、いったいどうなるかとさすがに不安になった。(141ページより)
どうあれ、開業医は働き続けなくてはならないということだ。夏休みや正月休みを取るだけでも収入はガクンと減るわけで、「医者は儲かる」というステレオタイプなイメージがあてはまるほどラクな仕事ではないということなのだろう。
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開業医の正体-患者、看護師、お金のすべて (中公新書ラクレ 809)松永 正訓中央公論新社
筆者紹介:印南敦史
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。
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