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印南敦史の「ベストセラーを読む」 第21回

『消齢化社会 年齢による違いが消えていく! 生き方、社会、ビジネスの未来予測』(博報堂生活総合研究所 著、インターナショナル新書)を読む

「最近の若者」いない説。年齢による違いは消えていっている

2024年01月18日 07時00分更新

文● 印南敦史 編集●ASCII

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“消齢化”を推し進めた3つの変化

 さまざまなデータの分析結果、ここでは「高齢の人たちが、昔より、気持ちの面でも体力的な面でも若くなっているのではないか」との推論が導き出されている。具体的には、以下の3つの変化を背景として消齢化が進んでいるようだ。

(1)能力の面で、年齢に囚われず「できる」ことが大きく増えた
(2)価値観の面で、世代交代や時代の共有を経て、社会から「すべき」が減った
(3)嗜好や関心の面で、「年相応」から離れ出した生活者の「したい」が重なった(79ページより)

 どれも納得できるが、10代のころ、“団塊の世代”と呼ばれる上の世代から「〜すべきだ」「〜しなければいけない」という押しつけを強いられてきた私は、とくに(2)に共感する。そうした経験が「ああはなりたくない」という思いとなり、「下の世代に押しつけをするのはやめよう」という気持ちを根づかせたからだ(なかなかうまくいかないけれども)。

 しかし、他の2つにしても同じだ。(1)に関していえば、スポーツなどで体を動かし、スマホやインターネットを駆使する高齢者もいまや珍しくはない。(3)もそうで、若い子から80年代のシティ・ポップが再評価されるとか、お父さん世代が『チェンソーマン』など最近のアニメにハマるなどというケースは、いまやどこにでもある。

 しかも2032年には上述した団塊の世代が85歳のラインに突入し、社会から退出を開始することになる。戦後の高度経済成長期を経験してきた人たちが退くのだから、以後は「停滞した日本」という同じ時代を共有した世代ばかりで構成される社会になるわけだ。

 そうなると必然的に、「社会のダイナミズム」のようなものが徐々に失われていくであろうことは誰にでも想像できる。

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