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既存免疫を活用して経鼻ワクチンを実現する技術=阪大など

2023年12月15日 18時09分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学、和歌山県立医科大学、千葉大学などの研究グループは、過去の感染やワクチン接種で誘導した生体内抗体を抗原送達キャリアとして利用することで、免疫賦活化剤(アジュバント)を使うことなく、経鼻ワクチンで免疫応答を誘導できることを明らかにした。粘膜免疫を安全に誘導可能なアジュバントはまだ開発されていないことから、今回の成果は有効かつ安全な経鼻ワクチンの実用化につながるという。

大阪大学、和歌山県立医科大学、千葉大学などの研究グループは、過去の感染やワクチン接種で誘導した生体内抗体を抗原送達キャリアとして利用することで、免疫賦活化剤(アジュバント)を使うことなく、経鼻ワクチンで免疫応答を誘導できることを明らかにした。粘膜免疫を安全に誘導可能なアジュバントはまだ開発されていないことから、今回の成果は有効かつ安全な経鼻ワクチンの実用化につながるという。 研究グループは鼻腔内の抗体は病原体に結合して排除するだけでなく、トランスサイトーシスによって鼻腔リンパ組織に病原体を運び、抗原特異的な免疫応答を効率よく誘導するという近年の発見から、鼻腔内にすでに存在している抗体が認識するタンパク質(キャリアタンパク質)に、目的のワクチン抗原を融合させることで、生体内の抗体が抗原送達キャリア(キャリア抗体)となって、ワクチン抗原を鼻腔リンパ組織に送達し、粘膜免疫を効率よく誘導できると考えた。 そこで、キャリア抗体が認識するタンパク質としてインフルエンザウイルスの膜タンパク質であるヘマグルチニン(HA)を利用し、新型コロナウイルス由来Sタンパク質のレセプター結合ドメイン(RBD)を融合させたRBD-HAを作成し、これをワクチン抗原として使用した。インフルエンザウイルスに罹患歴があり、鼻腔中にHA特異的抗体を持つマウス(インフルエンザ罹患マウス)にRBD-HAを経鼻投与したところ、アジュバントを使っていないにもかかわらず、鼻腔中や血中でRBD特異的なIgA、IgGが顕著に上昇していることが明らかになった。このマウスに、新型コロナウイルスを感染させたところ、RBDとアジュバントを投与したマウスに比べてウイルス量が有意に減少していることも確認できた。 さらに、肺炎球菌やRSウイルス由来のタンパク質とHAを融合させたワクチン抗原の効果も検証した。その結果、どちらも強いワクチン効果を誘導することが判明した。また、インフルエンザとは異なる既存免疫を利用できるか検証するために、mRNAワクチンで誘導した新型コロナウイルスの抗体をキャリア抗体として利用したところ、問題なく利用できることも分かった。 研究成果は12月1日、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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