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業務を変えるkintoneユーザー事例 第208回

kintone hiveの集大成として今年も6地区のファイナリストが集結

kintone AWARD 2023開催!kinjoyの光成工業とIT維新を起こした檜垣造船が登壇

2023年12月04日 09時30分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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超アナログな造船会社でIT維新を起こした檜垣造船

 2社目は、中国・四国地区代表の檜垣造船だ。愛媛県今治市にある近海船を造る企業で、これまで700隻以上の開発・建造を行ってきた実績を持つ。貨物船だけでなく、ケミカルタンカーやLNG運搬船など多様な船舶の建造を手掛け、国内初となる内航LNG燃料貨物船を開発するなど、時代のニーズにも対応している。

 登壇したのは吉井美佳氏と喜多椋平氏の二人。どちらも、これまでIT経験がなかった。

「檜垣造船はほんの5年前まで超アナログ企業でした。“ない”が当たり前だったんです。PC支給はない、情報共有がない。そして共有ツールもない」と吉井氏。

檜垣造船からは喜多椋平氏と吉井美佳氏が二人登壇

 たとえば、社外セミナーに行ったら、その場でメモを取り、その後、会社に帰ってパソコンで内容を打ち込み、データを印刷して上司11人に押印してもらう。その紙が自分の手元に戻ってくるまでなんと2週間かかっていたという。

「造船所は紙が1番や。紙の図面があったら船は作れるんや」と言われ、喜多氏は衝撃を受けたという。紙文化の根は深く、会社にイントラネットの導入を訴えたがスルーされた。

超アナログ業務が当たり前で、ないない尽くしだったそう

 そんな中、2018年に経営体制が一新され、新社長がIT化を打ち出した。流れるようにkintoneとGaroonの導入が決定し、イントラネットを構築することができた。

 しかし、社内からは「なんで今のままじゃいけないの?」「やり方を変えると仕事が増える」「勝手に変えられても困る」「今でも業務はうまくいっている」と不満の声が続出する。

 そこで、kintoneを浸透させるために、1年をかけて複数の説明会を実施。独自マニュアルも約100冊作成した。その上で、「稟議書」アプリを作成し、予算が必要であればkintoneを使わざるを得ない状況を生み出した。その後も、部門間をまたいで情報共有が必要な業務から優先的にアプリ化していく。

kintoneとGaroonでイントラネットを作ったものの社内からは不満が続出

説明を繰り返し、マニュアルを準備し、丁寧にkintoneを浸透させた

「檜垣造船の当たり前は変わりました。2週間かかっていた報告書も秒で完結するようになり、kintoneが必要不可欠に。IT維新時代の到来ということで、次は、データ活用に取り組みました」(吉井氏)

 データ活用として取り組んだのが、クレーム対応のアプリだ。部署ごとにクレームに対応しており、属人化が起こりやすい状況だったが、「品質異常報告書」アプリを作ることで、進捗確認が容易になり、部署をまたがり情報を水平展開できるようになった。原因を分析し、不具合を繰り返さないようにすることで、顧客満足度の向上にもつながっている。

 さらには、各部署にIT管理者を設置することで、自部門内で素早い対応が取れるようになった。実務者なのため、本当に必要なアプリを開発できる。さらにデータを部門で抽出し、業務にデータを活用できる。事務作業もペーパーレス化し、リモートワークも可能になった。

各部署にIT管理者を置いた

 今は他システムとの連携を推進しているという。第1弾として選ばれたのが、自社の基幹システムとkintoneの連携だ。造船業では膨大な量の部材を扱うが、それをkintoneで整理して基幹システムの方に取り込む。

現在は、他システムとkintoneの連携を推進する

「kintoneを使っているうちにマインドの変化があり、社風も大きく変わりました。社員1人1人から出た意見がボトムアップされ、社長に直接届き、みんなの頑張りが可視化されるようになりました」(喜多氏)

「大事なことは2つあります。1つは、トップが示した明確なビジョンを全社員に周知するだけでなく、共感してもらうことです。もう1つ、それに合わせた最適なシステムです。それがkintoneだと思っています」と吉井氏は締めた。

 次回は、中盤の3番手、アートワークスの宗政伊織氏と、4番手、ミエデンの山田駿氏のプレゼンの様子をレポートする。

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