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発売開始から半年経ったHULFT Squareの現状をセゾン情報システムズが説明

バンキングソフトのnCinoと貿易DXのトレードワルツがHULFT Squareを語る

2023年08月31日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2023年8月30日、セゾン情報システムズは2月に発売を開始したデータ連携プラットフォーム「HULFT Square」の事業方針説明会を開催した。イベントにはHULFT Squareを用いて、ユーザーとプラットフォームを「つなぐ」選択をした2社が登壇し、事業概要やHULFT Square採用の理由を語った。

HULFT Squareユーザーはノーコード開発に強い関心

 説明会の冒頭、登壇したセゾン情報システムズ 社長執行役員 CEOの葉山誠氏はSIからデータ連携ビジネスに向けた同社の変遷について説明した。

セゾン情報システムズ 社長執行役員 CEO 葉山誠氏

 1970年の設立以来、セゾン情報システムズは、SIを中心に事業を展開してきたが、1993年にはファイルでの連携を実現するHULFT、2000年にデータによるシステム連携を実現するDataSpider(当時はアプレッソ)の販売を開始し、データ連携ビジネスに大きく舵を切る。

 2019年にはデータプラットフォーム事業を開始し、2022年現在データ連携ビジネスの売上構成比は全売上のほぼ半分を占めるようになった。来年の2024年4月には社名をセゾン情報システムズからセゾンテクノロジーに変更し、変革を続ける同社の対外的なイメージも一新していくという。

セゾン情報システムズからセゾンテクノロジーへ

 こうしたデータプラットフォームの事業の中心になるプロダクトが2月に発売開始された日本発iPaaSを謳う「HULFT Square」になる。セゾン情報システムズ 取締役 常務執行役員 石田 誠司氏は、「テーマはグローバル、マルチクラウド&SaaSへの対応。外部との連携がiPaaSの破壊力」と語る。

セゾン情報システムズ 取締役 常務執行役員 石田 誠司氏

 北米をベースに開発され、当初からグローバル展開を目指してきたHULFT Squareだが、上期(4~9月)にはGDPR、CCPA、SOC2など各種セキュリティ規格に対応した。9月にはセルフIT機能の充足を謳い、サービス状態の可視化、イベントのトレースやログの一括ダウンロードなどの監査対応、AWSやAzure連携、コネクターの強化のほか、開発を容易にするスクリプトテンプレートも用意される。ユーザーに向けたアンケートでも、SaaS連携だけでなく、内製化につながるノーコード/ローコードの開発への関心が高い。

 HULFT Squareのノーコード開発の生産性は圧倒的だ。たとえば、固定長の受注ファイルを受け取り、製品マスターと照合し、SQL Serverに格納。すべてのデータ処理が終了した後、完了報告をメールで送るというフローの場合、従来のJavaの開発だと1万4000ステップかかっていたが、HULFT Squareの場合、13個のアイコンをドラッグ&ドロップで組み合わせることで開発できるという。実績の高い「プロダクト」、コンセプトデザインによる「標準化」、セミナーやPoE支援などの「教育」という3つのメニューで内製化を支援するという。

ノーコード開発の生産性

 さらに同社では生成AIとの連携も進めている。具体的には、顧客、購買、経費、会計、社員マスタなどの自社データをHULFT Squareでデータプラットフォームに抽出し、生成AIと連携した活用を可能にするエンタープライズ向けのLLM。ChatGPT、Azure OpenAI Service、Slackなどを用いた社内データの活用サービスとして提供する見込みとなっている。

2社がHULFT Squareを採用した理由とは?

 説明会では、7月にセゾン情報システムズとの協業を発表し、HULFT Squareを活用している2社のサービスプロバイダーが登壇した。

 1社目のnCino(エヌシーノ)は北米ノースカロライナに本社を持つバンキングソフトウェアのプロバイダー。2011年末に創業し、従業員は1700人以上、導入金融機関は1650社を超えるという。日本でのサポートはすでに4年になる。

 「銀行員が銀行員のために」作ったというnCino Bank Operating Systemは、口座開設、融資の受付、格付け財務分析、稟議、実行、モニタリング、経営管理まで銀行の融資業務を幅広くカバーする。逆に基幹システムはスコープ外となるため、HULFT Squareのようなデータ連携サービスは必須となるという。

 HULFT Square採用の理由に関して、登壇したnCino ディレクター ストラテジックパートナーシップアンドアライアンス 中尾貴之氏は、「われわれのお客さまである銀行ではほぼHULFTを導入している。新しい連携にもベストだと判断した」と語る。

nCino ディレクター ストラテジックパートナーシップアンドアライアンス 中尾貴之氏

 2社目のトレードワルツは、NTTデータなど16社の出資によって2020年4月に設立されたスタートアップ。手がけるのは、貿易業界のデータ連携を実現するプラットフォーム「TradeWaltz」の提供だ。2022年4月にリリースし、すでに63社が有償利用している。

 国際貿易での企業のやりとりは、実はいまだに紙やPDFなどが主流。データ入力や書類作成などのマニュアル作業で、多くの時間とコストが費やされており、日本では輸出入で1回あたり72時間かかる。一方で、デジタル化の進んでいるヨーロッパはたった2時間で完了するという。

 TradeWaltzは貿易に関する構造化データの交換にブロックチェーンの技術を用いる。そして、貿易に関わる多くの業種や他の産業のプラットフォームと連携するためのツールとして、HULFT Squareを標準連携として用いた。つなぐ相手が膨大になるため、ノーコードで開発が可能なHULFT Squareは必要なツールだった。

 HULFT Square採用の理由に関して、トレードワルツ 執行役員COO、CMO 兼 グローバル&アライアンス事業本部長 染谷 悟氏は、HULFTの実績面に加え、セゾン情報システムズのイノベーションに向けた気持ちが大きかったという。「いつかやりたいという会社は多いが、リスクをとってイノベーションに向かう会社は少ない。社名を変えてまでもチャレンジしていく姿勢に共感した」と語る。

トレードワルツ 執行役員COO、CMO 兼 グローバル&アライアンス事業本部長 染谷 悟氏

 同日にはテレビの放送内容をテキスト化した「TVメタデータ」を提供するエム・データとの協業も発表。HULFT Squareをプラットフォームとして、CDP・DMPなどと連携する総合マーケティングプラットフォームを目指し、新たなサービスを提供していくという。

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