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DNAメタバーコーディングで草原生態系の食物網を解明=京大など

2023年08月14日 05時17分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学と農業・食品産業技術総合研究機構の共同研究チームは、「DNAメタバーコーディング」技術を応用し、50種のクモと約1000種の餌生物が織りなす食物網の構造とその動態を解明した。DNAメタバーコーディングは、土壌や海水といった多数の生物種のゲノムが含まれるサンプルを分析し、そこに存在する生物種の組成を解明する手法。

京都大学と農業・食品産業技術総合研究機構の共同研究チームは、「DNAメタバーコーディング」技術を応用し、50種のクモと約1000種の餌生物が織りなす食物網の構造とその動態を解明した。DNAメタバーコーディングは、土壌や海水といった多数の生物種のゲノムが含まれるサンプルを分析し、そこに存在する生物種の組成を解明する手法。 他の生物を捕食する生物(捕食者)の体内には、餌となる生物種(餌種)のDNAが含まれている。研究チームは、早春から晩秋の草原生態系を対象とした野外調査で、捕食者であるクモを2000個体以上採集し、その全個体について餌種のDNAをターゲットにした分析を実施。食物網の構造をネットワーク科学の観点から解析した。 その結果、検出された約1000種の餌種の中には、植物の葉を食べる昆虫や地下の有機物を食べるトビムシ類、他の節足動物を餌とする捕食者や寄生者が含まれていることがわかった。さらに、こうした多様な餌を捕食し、地上と地下の生態系間をつなぐ役割を果たしているクモを探索したところ、季節の変化とともに食う-食われる関係のネットワーク内で中核に位置する種(「コア生物種」)が入れ替わっていることが明らかになった。 今回の研究のアプローチを今後拡大することで、生態系内でどのように物質が循環しているのか、生態系の機能と安定性に「コア生物種」がどのように寄与するのか、といったことの解明につながることが期待される。 研究論文は、ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)に2023年7月17日付けで掲載された

(中條)

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