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地中の有機物と微生物活性を光で推定、北大など新手法

2023年08月08日 06時53分更新

文● MIT Technology Review Japan

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北海道大学、信州大学、九州大学、国立環境研究所の共同研究チームは、土壌からの反射光を解析することで、野外の森林土壌中の有機物組成と、それが微生物に分解されて生じる二酸化炭素(CO2)の放出速度を推定する新しい観測法を開発した。

北海道大学、信州大学、九州大学、国立環境研究所の共同研究チームは、土壌からの反射光を解析することで、野外の森林土壌中の有機物組成と、それが微生物に分解されて生じる二酸化炭素(CO2)の放出速度を推定する新しい観測法を開発した。 研究チームは、短波長赤外領域(波長1000~2500ナノメートル、1nm=10-9メートル)の反射光が有機物や水分の情報を反映することに着目。反射の強さを波長ごとに分けて計測する分光反射率計測を用いて、土壌中の有機物組成が異なる13樹種の林床の土壌について土壌の特性(有機物組成や水分量など)とCO2放出速度を室内で測定した。 次に、室内の分析結果をもとに、分光反射率から有機物組成と水分、それらと関係するCO2放出速度を推定するモデル式を作成。野外で、地中に挿した光ファイバーを使って分光反射率を深さごとに計測し、モデル式に当てはめて野外での有機物組成とCO2放出速度を推定した。 これらの推定値を、実際のCO2放出速度をガス分析計で計測した値と比較したところ、土壌中の有機物組成や水分量、容積重といった土壌特性を、相対誤差23~32%で推定できることがわかった。さらに、29.8%の相対誤差で微生物によるCO2放出速度が推定できることも判明した。 森林の土壌には莫大な量の炭素が有機物の形で貯蔵されており、微生物はその一部を分解して大気中にCO2を放出している。今回開発した手法は、野外での炭素循環に関わる調査研究の効率を向上させ、深度ごとの地中の炭素量マッピングやCO2放出の多地点モニタリングへの貢献が期待される。 研究論文は、アグリカルチュアル・アンド・フォレスト・メテオロロジー(Agricultural and Forest Meteorology誌)で2023年6月21日に公開された

(中條)

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