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核融合プラズマ中の水素分子の回転温度を予測する手法=京大など

2023年08月08日 06時55分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学と米ローレンス・リバモア国立研究所などの国際共同研究チームは、核融合におけるプラズマ中の水素分子の回転温度を予測する手法を開発した。プラズマ再結合(電離などで生じた荷電粒子が中性化する過程)を効果的に起こす回転温度における分子の壁表面との相互作用や、プラズマ中の電子・イオン衝突の寄与の評価に適用することで、再結合を制御できるようになる可能性がある。

京都大学と米ローレンス・リバモア国立研究所などの国際共同研究チームは、核融合におけるプラズマ中の水素分子の回転温度を予測する手法を開発した。プラズマ再結合(電離などで生じた荷電粒子が中性化する過程)を効果的に起こす回転温度における分子の壁表面との相互作用や、プラズマ中の電子・イオン衝突の寄与の評価に適用することで、再結合を制御できるようになる可能性がある。 核融合発電では、磁場で閉じ込めた水素プラズマを1億度に加熱し、イオン同士が衝突して核融合する際に放出されるエネルギーを利用する。この際、閉じ込め領域から漏れ出たプラズマによって装置の壁が損傷することを防ぐため、壁の近くにガスを入射し、放射と再結合でプラズマを冷却する必要がある。再結合は、プラズマ中の水素分子の振動・回転温度に応じて起こりやすさが変わると考えられており、振動・回転温度を予測し、制御する方法が研究されている。 研究チームは今回、水素分子の回転温度を決めるメカニズムの解明を目指し、プラズマの温度・密度と壁材料が異なる3種類の核融合実験装置を用いた比較研究を実施。それぞれの装置で、プラズマと接する壁近くから放射される水素分子の回転輝線を分光計測し、低エネルギー準位の回転温度を評価した。 併せて、水素分子が壁から脱離してプラズマ中に侵入し、電子・イオン衝突により励起され、発光するモデルを提案。モデルに基づく回転温度の計算を実行した結果、3種類の装置で評価した回転温度の実験値を計算で説明できることが判明した。さらに、文献で報告されていた他装置の実験値も説明できることが分かった。 研究論文は、オーストリアおよび英国の合同出版国際学術誌ニュークリア・フュージョン(Nuclear Fusion)に、2023年7月27日付けでオンライン掲載された

(中條)

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