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ゼロ磁場下での超伝導ダイオード効果の磁化制御に成功=京大など

2023年08月07日 05時58分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学などの共同研究チームは、超伝導体、強磁性体、重金属を含む極性超格子において、ゼロ磁場下において、ある方向に電流を流した場合には超伝導状態になり、逆向きの電流の場合には常伝導状態になる「超伝導ダイオード効果」の効率が40%を超えることを観測。さらに、ゼロ磁場下における超伝導ダイオード効果の磁化制御に成功した。

京都大学などの共同研究チームは、超伝導体、強磁性体、重金属を含む極性超格子において、ゼロ磁場下において、ある方向に電流を流した場合には超伝導状態になり、逆向きの電流の場合には常伝導状態になる「超伝導ダイオード効果」の効率が40%を超えることを観測。さらに、ゼロ磁場下における超伝導ダイオード効果の磁化制御に成功した。 研究チームは今回、ニオブ(Nb)層、バナジウム(V)層、タンタル(Ta)層、プラチナ(Pt)層、鉄(Fe)層を含む極性構造を有した超格子試料を細線形状に微細加工し、電気抵抗を測定。超格子面内かつ電流と直交する方向に外部磁場を印加し、強磁性体である鉄に由来する磁化の方向を変化させながら、電気抵抗の直流電流依存性を調査した。 その結果、この超格子では超伝導と強磁性が共存するだけでなく、超格子の臨界電流密度(超伝導体に流すことができる最大の電流密度)が磁化と印加電流の方向によって異なることを見い出し、磁化の角度に依存した巨大な臨界電流密度を観測。さらに、ゼロ磁場下における「超伝導-常伝導スイッチング」を実証した。この時、臨界電流に対する非相反臨界電流の比で定義される効率は40%を超えており、超伝導ダイオード効果の符号と大きさを磁化制御することにも成功した。 ダイオード効果は、順方向に電流をよく流すが、逆方向にはほとんど流さない効果であり、整流器などに広く用いられている。エネルギー損失の極めて小さい超伝導ダイオード効果を発現させるためにはこれまで、外部磁場や複雑な磁気状態の制御、あるいは特殊な結晶対称性が必要だと考えられており、ダイオード効果の効率の改善も課題であった。 今回の成果は、超低消費電力の新しい不揮発性メモや論理回路などの実現に貢献することが期待される。研究論文はアドバスト・マテリアルズ(Advanced Materials)に2023年7月6日付けでオンライン掲載された

(中條)

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