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貴金属を使わず、水に安定なアンモニア分解触媒を開発=東工大

2023年08月04日 06時51分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京工業大学の研究チームは、貴金属を使わず、水に安定かつ高性能なアンモニア分解触媒を開発。同触媒が350℃付近からアンモニア分解活性を示し、580℃においてほぼ100%のアンモニア転化率に到達するなど、既存のニッケル(Ni)触媒に比べてアンモニア分解反応の動作温度を140℃以上低温化することに成功した。

東京工業大学の研究チームは、貴金属を使わず、水に安定かつ高性能なアンモニア分解触媒を開発。同触媒が350℃付近からアンモニア分解活性を示し、580℃においてほぼ100%のアンモニア転化率に到達するなど、既存のニッケル(Ni)触媒に比べてアンモニア分解反応の動作温度を140℃以上低温化することに成功した。 研究チームは以前に、世界最高レベルのアンモニア分解活性を示す「カルシウムイミド(CaNH)」にニッケルを担持した「Ni/CaNH」触媒を開発したが、大気や水中で速やかに分解されて失活してしまうことが大きな課題であった。そこで今回、「六方晶チタン酸バリウム(h-BaTiO3−x)」中の酸素イオンの一部を窒素イオンで置き換えた酸窒化物(酸素イオンと窒素イオンが共存する化合物)にニッケルを担持した「Ni/h-BaTiO3−xNy」触媒を開発。同触媒が水に暴露した後でも触媒性能が低下せず、構造も維持されることを明らかにした。 さらに、ニッケル以外の非貴金属(鉄やコバルト)に対しても同様に優れた促進効果を示すことも判明。同触媒では、h-BaTiO3−xNyの表面に存在する窒素空孔(酸窒化物などの格子に含まれる窒素イオンが部分的に抜けた空きサイト)でアンモニア分子が活性化されるため、化学的安定性の高い酸窒化物をアンモニア分解触媒の担体材料に応用することで、高活性かつ高耐久性なアンモニア分解触媒の設計が可能であることを実証できたとしている。 アンモニアは、水素含有量が高く液化しやすいため水素の貯蔵・輸送のための水素キャリアとして有望である。アンモニアから水素を取り出し燃料電池や内燃機関などに利用するためには、低温プロセスで高効率に作動する触媒技術が求められているが、従来技術では非貴金属触媒では低温化は困難であった。 研究論文は、ドイツ科学誌「アドバンスト・エナジー・マテリアルズAdvanced Energy Materials)のオンライン速報版に2023年7月25日付で公開された

(中條)

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