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老化すると脳の神経細胞の核がかたくなる、マウスで観察=東大

2023年08月01日 06時49分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学の研究チームは、マウスでの実験により、大脳視覚野の神経細胞(ニューロン)の核は、加齢に伴って神経活動依存的な形態変化が起こりにくくなり、シワが増え、かたくなることを見い出した。

東京大学の研究チームは、マウスでの実験により、大脳視覚野の神経細胞(ニューロン)の核は、加齢に伴って神経活動依存的な形態変化が起こりにくくなり、シワが増え、かたくなることを見い出した。 研究チームは今回、マウスが外界から刺激を受けたときのニューロンの核の形態変化の過程を「生体脳タイムラプスイメージング手法」で観察した。生体脳タイムラプスイメージング手法とは、マウスの脳を麻酔下で開頭し、顕微鏡観察に必要なカバーガラスとアダプターを取り付けることで、生きたまま脳内を観察する手法である。今回は、ニューロンの核膜を蛍光でラベルしたマウスを用いて、視覚野ニューロンの核の形態変化をリアルタイムで観察した。 同チームは、ニューロンにおいて核の形態を可視化できるマウスを作製。大脳皮質視覚野のニューロンを観察するための顕微鏡の窓を取り付け、マウスの眼に光を当てることで生理的な刺激を与えた。すると、2カ月齡の若齢マウスでは光照射後10分程度で核が徐々にへこんでいくことがわかった。一方、2年齢以上の老齢マウスでは刺激を与える前からへこんだ核が多く、光を照射しても核の形態がほとんど変化しなかった。 研究チームは、老化したニューロン核が形態変化しにくい原因の一つとして核がかたくなっていることがあるのではないかと考察。極小の針で試料の形態や力学特性を調べる「原子間力顕微鏡」を用いて、若齢マウスあるいは老齢マウスから抽出したニューロンの核のかたさを測定したところ、ニューロンの核は加齢に伴ってかたくなることがわかった。 脳が老化すると、外界の刺激に応じた適切なニューロンの性質変化が起こりにくくなり、結果として記憶力や認知機能の低下、加齢性神経疾患の発症につながる。研究チームによると、核のダイナミクスは状況に応じた適切な遺伝子発現変化に重要であるため、今回の研究により老化に伴う脳の機能低下の一端が解明できたのではないかとしている。研究論文は、エイジング・セル(Aging Cell)誌に2023年7月21日付けで掲載された

(中條)

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