業務を変えるkintoneユーザー事例 第190回
伴奏者がくれた「理想と現実の間をkintoneで埋める」のフレーズ
kintoneを家具職人に使ってもらいたい! 新入社員の熱意とアプリが現場を変えた
2023年07月27日 11時00分更新
アプリで有給取得率が3倍に改善
新たに休暇・代休申請のアプリも開発した。これも「有給」「代休」の2つの大きなボタンを中心にしたシンプル画面で、使いやすさを前面に出した。「休暇を1時間単位で申請できるようになったことは画期的だった、職人からは代休が取りやすくなった、子供が病気のときに有給が取りやすくなっていい、といった声が寄せられるようになった」(宗政氏)
アプリの効果は数字にも表れた。以前は24%だった同社の有休取得率は、このアプリの導入後、約3倍の67.8%へと大きく向上した。「有給を申請するとき、これまでは紙に書いて直接社長に持って行かなければいけなかったので、遠慮があったと思う。アプリを使えば、顔を見なくていいので気楽に申請できる点が好評だった」(宗政氏)
必ず使うアプリの利用をきっかけにして、職人が、徐々に案件管理アプリのほうも見るようになった。あるとき、宗政氏は職人に納期を言うのを忘れていた。慌てて伝えに行くと、「ああ、それならkintoneで見たから知ってる」という返事が返ってきたという。「こっちを見もしない、無愛想な答え方だったが、すごくうれしかった」と宗政氏は振り返る。
ますます気をよくした宗政氏は、現場業務を便利にするアプリの開発を一段と加速した。
その1つ、「概算見積りアプリ」は、板のサイズを入力すると、自動的に見積り金額を計算できる。これによって顧客への見積りの返信スピードが格段に向上した。従来は見積りに1~2日かかっていた見積りが、最短1時間で完了できるようになった。
また「材料発注アプリ」は、必要な材料をリストから選ぶだけで、送信票の作成まで自動化する。「二重発注、記入漏れがなくなり、在庫管理と発注が1つのアプリで完結できるようになった」(宗政氏)
アプリを後から見てもわかるように記録する
同社ではなぜ、次々とアプリの開発と浸透ができたのか。宗政氏は次のように話す。
「研修時に伴奏者から、『めんどうくさいなと思ったことがあれば、すぐに直すように』と言われていた。それに従って細かいことでも修正していったことが、最終的にアプリをよくしたと思う」
最初はできがいいと思っていたアプリも、使っていくうちにおかしいところに気づくことがある。それは気づいたら即、直すことを徹底しているという。
ただし、修正を加えるときは、「絶対に触ってはいけない場所」には手を付けないように注意しなければいけないと宗政氏は言う。「1年前の自分が何をやっていたか覚えているのは無理。そのため、コメントを書き込んでおいたり、アプリ内のデータの名前を、意味がわかる形で残しておくことが非常に重要」
また、アプリ開発の環境もよかった。社内の開発メンバー(社長、先輩と宗政氏の3名)の間で目標が共有できたことが、ベストなアプリを作る下支えになったという。「例えば、基本機能だけでは難しいことは、外部サービスを使うという判断がその場でできたので、気持ちが折れることがなかった」(宗政氏)
kintoneが何もない私に自信を与えてくれた
宗政氏は、同社のアプリ導入で自分も成長できたと感じている。
「新卒で会社に入って、図面も描けない、何もできない自分が心細くなることもあった。でもそのとき、私には、入社したときから使っているkintoneがあると気づいた。アプリを少し直しただけでも、他の社員から感謝されることがうれしくて、自信につながった」と話す。
kintoneによる業務アプリのデータが蓄積されるにつれて、どういう人にどんな商品が売れているかを分析するなど、これまでは全くできなかったことに挑戦するベースも整った。宗政氏は、そのためにはどんなアプリが必要なのか、考えているところだ。
「研修で伴奏者から教えてもらったのは、『理想と現実の間をkintoneで埋める』ということだった。最初聞いたときは、何が理想か全くわからなかったが、今は、手が届きそうなところまできた。私の説明を聞いて、そんなことができるんだ、と1つでも気づきがあればうれしい」と宗政氏は語った。
宗政氏のプレゼンテーションは参加者の共感を集め、見事、関西地区代表に選出された。11月に幕張メッセで開催される「Cybozu Days 2023」に登壇する。ぜひ、会場に足を運んで、聞いてほしい。
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