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新型コロナmRNAワクチンの免疫反応を評価する新手法=神戸大など

2023年06月27日 09時37分更新

文● MIT Technology Review Japan

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神戸大学、Repertoire Genesis(レパトア ジェネシス)、セルスペクトの研究グループは、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの免疫反応を評価する新手法を開発した。

神戸大学、Repertoire Genesis(レパトア ジェネシス)、セルスペクトの研究グループは、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの免疫反応を評価する新手法を開発した。 新型コロナウイルスのmRNAワクチンを接種しても体内で十分に抗体を産生できない免疫不全患者などに、予防薬として遺伝子組み換え抗体薬(チキサゲビマブ/シルガビマブ)を投与することが多い。ただ抗体薬はワクチンの完全な代替にはならないため、ワクチン接種も併せて推奨されている。 抗体薬を投与した症例では抗体薬の抗体が体内に大量に存在するため、一般的なELISA法を使った抗体(蛋白)の測定ではワクチン接種後の免疫反応の評価は難しい。そこで研究グループは、抗体(B細胞受容体)の配列をmRNAで解析するBCRレパトア解析が有用と考えた。 研究グループはmRNAワクチン接種後、初期免疫が活性化すると考えられている接種後2週間前後、追加免疫が活性化すると考えられている接種後1週間前後にそれぞれレパトア解析を実施。ただ、レパトア解析で得られる配列情報は膨大で、レパトア解析単独では特定の抗原に対する免疫反応を評価することは困難である。そこで、パンデミック以降に、新型コロナウイルス抗体の配列などの膨大な情報を蓄積したデータベースが利用可能になっていることに着目。データベースに記録されている、特定の抗原(スパイク蛋白)と結合することが分かっている配列と、それに近い配列に的を絞って解析することで、ワクチン接種後の免疫反応を計測した。実際に、抗体薬の投与を受け、その後mRNAワクチンの接種を受けた患者で評価したところ、ELISA法ではワクチン接種による免疫反応を計測できなかったが、新手法では明確に計測できたという。 研究成果は6月22日、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(British journal of haematology)誌にオンライン掲載された。研究グループは開発した手法を「Quantification of Antigen-specific Antibody Sequence(QASAS)法」と命名し、特許を出願した。今後のmRNA製剤の開発にも役立つという。

(笹田)

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