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近大など国際研究G、原発性アルドステロン症の原因遺伝子を発見

2023年06月26日 14時01分更新

文● MIT Technology Review Japan

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近畿大学、富山大学、東北大学、広島大学、ロンドン大学クイーンメアリー校などが参加する国際研究グループは、高血圧症の一種である「原発性アルドステロン症」の新たな原因として接着分子「Cell Adhesion Molecule 1(CADM1)」の遺伝子変異を発見した。原発性アルドステロン症は一般的な降圧薬が効かず、副腎皮質に発生した腫瘍や、過形成となった副腎皮質からの「アルドステロン」と呼ぶホルモンの過剰分泌が原因に挙げられるものの、原因不明の症例も多い。

近畿大学、富山大学、東北大学、広島大学、ロンドン大学クイーンメアリー校などが参加する国際研究グループは、高血圧症の一種である「原発性アルドステロン症」の新たな原因として接着分子「Cell Adhesion Molecule 1(CADM1)」の遺伝子変異を発見した。原発性アルドステロン症は一般的な降圧薬が効かず、副腎皮質に発生した腫瘍や、過形成となった副腎皮質からの「アルドステロン」と呼ぶホルモンの過剰分泌が原因に挙げられるものの、原因不明の症例も多い。 研究グループは、英国の40例、ドイツの80例、フランスの34例のヒトのアルドステロン産生腺腫について全エクソン解析を実施した。加えて、米国の204例を対象に、CADM1遺伝子に限ったゲノム解析を実施。結果、6例でCADM1に1塩基が置換される遺伝子変異が見つかった。CADM1変異の発生頻度は0.5〜1%と考えられるという。 CADM1遺伝子の変異は、CADM1が細胞膜を貫通する領域内の2つのアミノ酸残基にのみ確認された。変異型CADM1について分子構造をコンピューター・シミュレーションで確認したところ、細胞膜貫通領域が正常型よりも短くなり、その影響で細胞膜貫通領域の角度が広くなっていると推測できたという。貫通角度が広くなることで、細胞膜間の距離が広がり、その結果として細胞間コミュニケーションが不良になると考えられる。細胞膜間の距離の拡大幅は3.5〜6.7ナノメートルとわずかだが、細胞間コミュニケーションを司るコネキシンと呼ぶ分子同士の結合を乖離させるには十分だという。 研究グループは、細胞培養実験で副腎皮質細胞に変異型CADM1を発現させ、細胞間コミュニケーション能が有意に低下していることを確認。変異型CADM1を発現させた副腎皮質細胞で、アルドステロンの産生が顕著に増加していたことから、細胞間コミュニケーションの不良によってアルドステロンが過剰に産生されると推測した。コネキシンの結合を阻害するペプチドを培養副腎皮質細胞に添加し、細胞間コミュニケーションを阻害したところ、アルドステロンの産生が顕著に増加したことを確認できたという。 研究成果は6月9日、ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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