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世界初、NTTが汎用的な量子回路に対するプログラム難読化を考案

2023年06月22日 06時52分更新

文● MIT Technology Review Japan

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NTTの研究チームは、量子ゲートを組み合わせて計算を実行する「量子回路」に関する難読化に関する新たなセキュリティ手法を考案した。従来よりも汎用的な量子回路に対して暗号学的に安全なプログラム難読化を可能にするもので、量子計算におけるプログラムの不正解析を防ぐことに寄与し、知的財産保護につながることが期待される。

NTTの研究チームは、量子ゲートを組み合わせて計算を実行する「量子回路」に関する難読化に関する新たなセキュリティ手法を考案した。従来よりも汎用的な量子回路に対して暗号学的に安全なプログラム難読化を可能にするもので、量子計算におけるプログラムの不正解析を防ぐことに寄与し、知的財産保護につながることが期待される。 研究チームは今回、疑似確定的量子回路という量子回路のクラスに対し、暗号学的に安全なプログラム難読化手法を世界で初めて実現した。疑似確定的量子回路は、重ね合わせのような量子状態ではなく、古典状態の入力に対して決まった古典状態の出力を1に近い確率で返す量子回路であり、ショア(Shor)の素因数分解アルゴリズムを含む汎用的なものである。こうした汎用的な量子回路に対する難読化手法はこれまでなかったという。 同チームは、古典の検証プロトコルに、量子の特性を生かした特殊な性質をもつデジタル署名を実現するアイデアを組み合わせるアプローチにより、今回の難読化手法を実現した。ここで言う特殊な性質とは、「ある文書に対して署名を生成すると、その署名鍵は他の文書に対して一切署名を生成できなくなる1度限りの署名鍵になっている」というもので、署名鍵を量子状態で表すことで実現でき、量子ならではの特性を利用しているという。 プログラムの難読化は、プログラムの機能を損なうことなくコードを書き換えることで、リバースエンジニアリングによるプログラムの解析などを防ぐために実行される。量子回路の難読化に関してはこれまで非常に限定的な量子回路のクラス、例えば「NULL量子回路」と呼ばれる常にゼロを出力する回路などに対してしか難読化手法が見つかっていなかった。 研究成果は6月20日から23日にかけて開かれる国際会議「第55回 計算理論に関するACM年次シンポジウム(55th Annual ACM Symposium on Theory of Computing:ACM STOC 2023)」で発表される。 (中條)

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