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土星の衛星で生命必須元素リンの異常濃集を発見=東工大など

2023年06月20日 06時47分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京工業大学などの国際共同研究チームは、日欧米の連携によって、土星の第2衛星である「エンセラダス」の海に、地球生命の必須元素であるリンが地球海水の数千から数万倍という高濃度で濃集していることを明らかにし、その要因を特定した。土星の氷衛星の1つであり、直径500キロメートル程度の天体であるエンセラダスは、内部に液体の地下海を持ち、生命を育む熱水噴出孔や複雑な有機物も存在することから、生命存在可能な条件を満たす天体として注目されている。

東京工業大学などの国際共同研究チームは、日欧米の連携によって、土星の第2衛星である「エンセラダス」の海に、地球生命の必須元素であるリンが地球海水の数千から数万倍という高濃度で濃集していることを明らかにし、その要因を特定した。土星の氷衛星の1つであり、直径500キロメートル程度の天体であるエンセラダスは、内部に液体の地下海を持ち、生命を育む熱水噴出孔や複雑な有機物も存在することから、生命存在可能な条件を満たす天体として注目されている。 欧米チームは、1997年に打ち上げられ、2004年に土星系に到着したNASAの土星系探査機「カッシーニ」に搭載されたダスト分析器のデータから地下から噴き出した海水中にリン酸を含む粒子が含まれることを発見。エンセラダスの地下海にリン酸が1~20mmol/L(1リットルの水に1000分の1~20モル)と、地球海水の数千倍から数万倍の高濃度で含まれていることを明らかにした。 この結果を受けた日本チームは、エンセラダスの地下海から噴出されるプルーム微粒子で観測される二酸化炭素やアンモニアを含む模擬エンセラダス海水と、海底を構成する岩石に似た炭素質隕石の粉末を用いた反応実験を実施。その結果、リン濃集を引き起こした要因が、アルカリ性かつ高炭酸濃度のエンセラダスの水環境にあることを突き止めた。 リンはDNAや細胞膜などの材料となる地球生命にとっての最重要元素であるが、天然での存在量は極めて低い。そのため、リンの濃集を可能にする場の存在が、地球生命誕生の鍵であろうと考えられている。今回の研究は、リンが濃集した水環境を地球外で初めて発見したものであり、地球と似た構成分子を持つ生命が期待されると同時に、原始地球での生命誕生の場の特定にもつながる可能性がある。 研究論文は、2023年6月15日付のネイチャー(Nature)に掲載された

(中條)

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